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いきなり退職届を出すのは非常識? 法的な扱いや円満退社のコツを紹介

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退職届

退職する際は、退職の意思を伝えるタイミングで退職届を提出するのが一般的です。

通常、退職予定日の1ヵ月前くらいのタイミングで退職届を提出するイメージがあるものの、いきなり提出しても問題ないのでしょうか?

本記事では、いきなり退職届を提出しても問題がないかを詳しく解説します。

円満退職に向けて気をつけるべきポイントや退職届を提出する一般的な流れ、そしてよくあるトラブル事例も紹介するため、これから退職を検討している方はぜひ参考にしてください。

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監修者
社会保険労務士法人レクシード
鈴木教大
社会保険労務士法人レクシード代表。沖縄から北海道まで数百社にのぼる顧問企業の支援実績から、労使トラブル対応など、特定社会保険労務士として現実的な解決策提示・予防措置提案を行うエキスパートとして定評があり、企業の労務を“予防”という視点からサポートすることに力を入れている。
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法的にはいきなり退職届を提出しても問題ない

結論からいうと、退職届をいきなり提出することは、法律上可能です。

民法第627条においては、次のように定められています。

(期間の定めのない雇用の解約の申入れ)

第六百二十七条 当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。

引用元:民法|e-Gov法令検索

つまり、正社員のように雇用期間に定めのない従業員の場合は、退職を希望する2週間前までに退職届を提出すれば、勤務先が拒否しても受理されるのです。

ただし、「退職届を提出するタイミングは、退職予定日の1ヵ月前」というイメージを持っている方も多いように、通常、退職届は退職希望日の1〜2ヵ月前までに提出するのが一般的です。

また、いきなり退職届を提出するのは社会人としてマナー違反とみなされるケースが多く、非常識だと思われる可能性が高いといえます。

そのため、退職を決意したら、まずは職場の上司に退職の意思を伝えたうえで、退職届を提出するのが望ましいでしょう。

勤務先によっては、退職届を提出する前に退職願の提出を求めるケースもあります。

職務規定に別途定めがあった場合は?

退職予定日の1ヵ月前に申し出るのが一般的とされているものの、ほとんどの企業では、就業規則において退職届を提出するタイミングについて定めています。

これは、退職するにあたって後任を見つけたり、必要に応じて人事異動をしたり、さらには後任者に対する引き継ぎをしたりするのに必要となるためです。

労働局のホームページにも「会社の就業規則に退職について規定されている場合は、原則として就業規則の規定が適用される」と記載があるように、民法よりも、就業規則の規定が優先されるという考え方が主流です。

多くの企業の就業規則では、退職予定日の1〜3ヵ月前までに退職届を提出するように定められています

半年前や1年前のように、現実的ではない提出の期限が定められている場合は、民法で定められているとおり、2週間前までの提出で退職が認められるケースもあります。

提出するタイミングで職場とトラブルに発展した場合は、労働基準監督署に相談してみましょう。

即日退職は可能?

正社員や契約社員、派遣社員などの雇用形態に関係なく、即日退職することは可能です。

ただし、それぞれの雇用契約によって、即日退職できるかどうかの条件が大きく異なります。

正社員の場合は、民法第627条に定められているとおり、退職する2週間前までに退職の意思を伝えなければなりません。

正社員が退職意思を伝えた当日に退職する行為は、法律違反とみなされてしまうため、注意が必要です。

自力で対応するのが難しい場合は、決して無理をせずに、退職代行の利用も検討してください。

即日退職に対応する業者に依頼すれば、退職の意思を代わりに伝えてくれるだけでなく、退職日の調整などの交渉ごとも依頼できるため、実質的な即日退職を実現できるでしょう。

退職金などでトラブルになる可能性も

法的には、いきなり退職届を提出しても問題がないとわかりました。

とはいえ、今後のキャリア形成に悪影響を及ぼす恐れもあるため、正しい方法で退職手続きを進めていくことが重要です。

少しでも円満に退職するためのポイント

少しでも円満に退職するために、押さえておくべきポイントを詳しく解説します。

業務の引き継ぎをおこなう

退職時の引き継ぎについて定めた法律はないため、法律上、退職時の引き継ぎは義務ではありません。

ただし円満退職するためには、後任の方がスムーズに業務にあたれるように、引き継ぎの準備をしておきましょう。

引き継ぎをせずに社内の業務が滞ってしまい、会社全体に多大な損失をもたらした場合は、損害賠償を請求される恐れもあるため注意が必要です。

退職日が決まったら、引き継ぎが必要な業務の洗い出しとスケジュールを作成し、それに沿って業務の引き継ぎをおこなってください。

最終出社日の1週間前までには、すべての業務の引き継ぎを完了させておくのが望ましいです。

迷ったら退職届は手書きにする

退職届は、手書きとパソコン作成のタイプがありますが、迷ったら手書きの縦書きを選びましょう。

もちろん、パソコンで作成した退職届も法的な効果はあるため、どちらを選択しても問題はありません。

ただし、手書きの方が丁寧な印象を受ける方が多いことから、職場に対する敬意や誠意がより伝わりやすくなります。

退職理由をなるべくポジティブに伝える

「給与が低い」「人間関係がギスギスしている」など、たとえ退職理由がネガティブだったとしても、そのままストレートに伝えてしまうのはとても危険です。

退職意思を伝えてから退職日を迎えるまでの期間、険悪な空気のなかで仕事をしなければならないだけでなく、執拗(しつよう)な引き留めに遭う恐れもあります。

直属の上司に退職理由を伝える際は、ポジティブな内容に変換するのがおすすめです。

  • 新しい業界で自分の力を試してみたい
  • 仕事を辞めて夢を実現したい
  • キャリアアップのために、より専門的な分野に挑戦したい

上司や同僚が応援したくなるような退職理由を伝えることで、退職までの期間も円満に付き合っていけるでしょう。

なるべく就業規則に従う

円満退職を目指す場合は、可能な限り就業規則に従うのが鉄則です。

法律上、雇用期間の定めがない正社員の場合は、退職を申し入れてから2週間を経過すると雇用契約が解除されます。

しかし、多くの企業の就業規則では、退職の申し出を1〜2ヵ月前に定めています。

具体的な期間が定められている場合は、原則として就業規則に従って退職準備を進めていきましょう。

退職届を提出する一般的な流れ

退職を決意してから退職届を提出するまでの、一般的な流れを詳しく解説します。

退職の意思を再確認する

会社に対して退職の意思を伝える前に、まずは仕事を辞める覚悟を再確認してください。

退職の意思を示すと、会社側が退職しないように促す「慰留交渉」をしてくる恐れもあります。

執拗に引き留められて、気持ちがブレてしまっては、退職できずに終わってしまうかもしれません。

退職届を提出する前に、今の職場で頑張り続けるという選択肢がないのか、本当に退職すべきかどうかを考えてみましょう。

仕事に対して求めることや今後のキャリアプランを見直し、退職に対する意思を今一度確認するのが大切です。

直属の上司に退職の意向を伝える

退職の意思が固まったら、すぐに退職届を提出するのではなく、まずは退職の意向を口頭で伝えます

退職の意思は、直属の上司に伝えるのがマナーです。

人事部や社長などに直接退職の意思を伝えてしまうと、上司の評価にも悪影響を及ぼしかねません。

上司にアポイントメントを取る際は、就業前や就業後など、忙しくない時間帯を選ぶのがおすすめです。

また、退職の意思を切り出すのは、上司と二人きりになれて話し声が外部に漏れない、会議室のような場所を選ぶのがよいでしょう。

相談日になったら、上司に退職する旨を伝えてください。

退職理由を述べる際は、職場に対する不満や愚痴を並べるのではなく、なるべくポジティブな理由に変換するよう意識すると、円満退職につながります。

退職の時期を明確にする

退職の申し出をする際は、「退社日は⚪️月末を希望しています」というように、希望する退社日とセットで伝えることでスムーズに交渉を進められるでしょう。

円満退職するためには、一方的に希望の退職日を主張するのではなく、あくまでも「相談する」という姿勢をアピールすることが大切です。

退職日を決める際は、以下の内容を確認しておいてください。

  • 転職先が決まっている場合は、転職先の入社日
  • 進行中の業務の進捗状況
  • 業務の引き継ぎ状況
  • 有給休暇の残数
  • 就業規則の内容

転職先が決まっている場合は、転職先の入社日から逆算して退職日を決定します。

指定された入社日に入社できないと、内定取り消しとなる恐れもあるため注意が必要です。

そのほかにも、進行中の業務や引き継ぎ状況、そして退職を申し出た時点の有給休暇の残数も退職日に大きく影響する要素のため、事前にチェックしておきましょう。

さらに、就業規則を確認し、退職届をいつまでに提出すべきかも把握してください。

退職予定日の1〜2ヵ月前までに提出を求めるケースが一般的とされています。

就業規則や雛形に沿って退職届を書く

就業規則やテンプレートに沿って、退職届を記入します。

退職届は手書きのイメージが強いかもしれませんが、最近ではパソコンで作成したものを印刷して提出する方法も増えてきています。

ただし、少しでも印象をよくしたい場合は、手書きにするのがよいでしょう。

準備すべきものは次のとおりです。

  • A4かB5サイズの白い便箋
  • 白無地の封筒(A4用紙:長形3号、B5用紙:長形4号)
  • 手書きする場合は、黒ボールペンか万年筆

記入する用紙は、A4かB5の大きさの白い便箋を使用します。

罫線(けいせん)が入ったものを使う場合は、ビジネス用のシンプルなものを選んでください。

退職届には、次の項目を記載します。

  1. タイトル(退職届)
  2. 導入文
  3. 退職理由
  4. 退職の日付
  5. 届出年月日
  6. 所属と氏名
  7. 宛先(組織の最高執行責任者の名前、敬称は「殿」「様」)

白無地の封筒に入れて提出する

退職届を提出する封筒は、必ず白の無地のタイプを選びましょう。

茶封筒は、日常業務で使用されることが多く、退職届の提出には適していません。

封筒の表の中央には「退職届」、裏の左下には「部署名・名前」と油性の黒ボールペンで記入してください。

退職届を提出する際は、封をせずに、封筒のふたを折った状態にしておきます。

退職届の宛名には会社の代表者を記載しますが、直属の上司に提出するのがマナーです。

いきなり退職届を提出した場合によくあるトラブル

法律や就業規則に定められた期間を守らずに退職届を提出した際によく起こるトラブル事例について、詳しく解説します。

退職届を受理してもらえない

いきなり退職届を提出した場合、受理してもらえないケースがあります。

ただし、退職届が受理されなくても、退職は可能です。

正社員のように雇用期間の定めがない無期雇用労働者の場合は、退職の申し入れをしてから2週間で雇用契約を解消できます。

また、契約社員や派遣社員のように雇用期間の定めがある有期雇用労働者の場合、やむを得ない事情があれば、契約期間内での退職が可能です。

このように、雇用形態に関係なく、法律や就業規則に定められた期間を守らなくても退職届を提出できます。

しかし、円満退職を希望する場合は、退職の意思を伝える前に就業規則を確認し、その時期に合わせて退職届を提出しましょう。

強い引き止めに遭う

何の前触れもなくいきなり退職届を提出すると、職場から執拗な引き留めに遭う恐れがあります。

人手不足や繁忙期などを理由に退職させたくないと考える企業の場合、給与や残業など待遇の改善を打診してきたり、なんとか辞めさせないために感情に訴えかけてきたりなど、さまざまな手法で会社にとどめさせようと試みるでしょう。

強い引き留めを避けるためには、退職の意思を伝えるタイミングと退職理由が重要です。

引き留めに遭わないためには、就業規則にのっとって手続きする必要があります。

退職日の決定や手続きについてのルールを確認し、退職日に向けて無理のないスケジュールで準備を進めてください。

また、退職理由も前向きな思いを感じられる内容にまとめておくことも大切です。

誰もが応援したくなるような理由にすることで、よい印象を与えやすくなるでしょう。

損害賠償請求をほのめかされる

退職届を提出した途端、「退職するなら損害賠償を請求する」と脅されるケースも少なくありません。

損害賠償請求とは、契約違反や不法行為により生じた損害や不利益を償うことを指します。

しかし、損害賠償を請求するためには膨大な費用と時間がかかるため、単なる脅しとしてとらえて問題ないでしょう。

退職時にトラブルに発展しないためにも、就業規則や法律のルールに従って退職準備を進めてください

明日から仕事に行きたくない人には退職代行がおすすめ

「今すぐにでも仕事を辞めたい」と悩んでいる方は、退職代行の利用を検討しましょう。

退職代行とは、依頼者の代わりとなって退職の意思を伝えるサービスです。

依頼する業者によっては、退職日の調整や未払金の請求など、職場との交渉ごとにも対応してもらえるため、近年若い世代を中心に人気を集めています。

退職代行には、3つの運営元があり、それぞれで対応するサービスが異なります。

運営元 民間企業 労働組合 法律事務所
退職意思の伝達
退職手続きや会社とのやり取りの仲介
退職日や有給消化に関する交渉 ×
訴訟や裁判への対応 × ×
費用相場 1~5万円程度 25,000円~3万円程度 5~10万円程度

民間企業が運営する退職代行は、リーズナブルな費用で利用できる一方で、依頼できる業務が限定的という特徴があります。

退職意思の伝達と退職手続きをする際のやり取りのみに対応しているので、次のような交渉ごとは依頼できません。

  • 退職日の調整
  • 有給休暇の取得
  • 給与や残業代などの未払金の請求
  • 退職金の支払い請求

職場と何かしらのトラブルを抱えている場合や退職時にもめ事に発展しそうな場合は、会社との交渉ごとに対応できる「労働組合」や「法律事務所」が運営・提携する退職代行サービスを選んでください。

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2,000円の追加費用を支払えば、労働組合に加入して退職に向けた交渉にも対応可能です。

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退職届に関してよくあるQ&A

退職届についてよく寄せられる質問を紹介します。

仕事をいきなり辞めるのは違法ですか?

正社員のように契約期間の定めがない従業員は、民法の定めにより、退職日の2週間以上前の申告が求められています。

また、契約社員のように契約期間に定めがある従業員の場合は、原則として契約期間中の退職は認められていません。

ただし、雇用形態に関係なく、次のような理由がある場合は、即日退職が認められるケースがあります。

  • 会社と従業員との間で合意を得られたとき
  • 職場が法令に違反していることを理由に退職を申し出たとき
  • やむを得ない事由に該当するとき

正社員を即日辞めたいのですが、可能ですか?

正社員が即日退職するためには、次のいずれかの条件をクリアしなければなりません。

  • 退職日まで有給休暇を消化する
  • 退職日まで欠勤扱いとしてもらう
  • 会社から即日退職の合意を得られた

ただし、上記のケースに当てはまらない場合でも、体調不良や家庭の事情などやむを得ない事情があると判断されれば即日退職できます。

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入社1日目で退職できますか?

入社して間もないタイミングであっても、退職は可能です。

入社初日に退職する場合でも、保険料や給料の手続きなどが必要なため、正しい方法で退職手続きをしなければなりません。

退職理由は、会社を尊重した内容で伝えるよう心がけてください。

さいごに|退職届をいきなり渡すのはなるべく避けよう

これまで見てきたとおり、いきなり退職届を提出することは可能です。

ただし、社会人のマナーとしてありえない行為ととらえられるケースも少なくないため、法律や就業規則に定められたタイミングで提出するのが望ましいでしょう。

雇用形態や会社が定める規則によって手続きは異なりますが、退職の意思が固まったタイミングで、直属の上司に相談したうえで退職届を提出してください。

引き継ぎは義務ではないものの、後任が困らない程度に必要な最低限の資料だけでも作成しておきましょう。

上司や同僚に迷惑をかけないためにも、本記事で紹介した内容を参考に、退職に向けた準備を進めてください。

すぐにでも仕事を辞めたいと考えている方は、退職代行の利用を検討してみるのがよいでしょう。

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本記事は退職代行の教科書を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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