パワハラで会社を辞めたい! ~退職へ向けて② すべき対応を理解しよう~


パワハラで会社を辞めたい! ~退職へ向けて② すべき対応を理解しよう~


パワハラで会社を辞めたい! ~退職へ向けて② すべき対応を理解しよう~


パワハラシリーズ1作目では、パワハラが増加している実情とともに、パワハラの問題点や何がパワハラにあたるかなど、パワハラの実態を把握するための情報をお届けしました。

今回は、実際にパワハラといえる状況に遭遇してしまった時に、どう対策していけばよいのかについての情報を提供します。

対策については、会社に残るか、会社を辞めるかという視点からまとめてみます。

証拠集めなど、辞める辞めないにかかわらず、できる対策が同じ部分も多いですが、退職する場合には、失業保険など特有の問題が出てくるので、この切り口で説明していくことにします。

証拠集め

相手方の行為がパワハラである!として、然るべき対応をしていきたいのであれば、当然証拠が必要となってきます。

裁判沙汰にする場合はもちろん、そうでなくても、やはり相手方にも言い分や守られる利益があり、あなたがあの人はパワハラだ!と言っただけで、それが認めれらるわけではないのは当然です。

なので、退職するしない、争いにするしないにかかわらず、パワハラに遭遇した時には、まず証拠を押さえておく、これが鉄則です。そうでないと他の人や機関は、対応したくても対応しようがなくなってしまうのです。

証拠なんて…と、争いごとの雰囲気に躊躇される方もいらっしゃると思いますが、何も裁判にするためだけに必要なわけではないのです。

労働基準監督署など行政に働きかける時や労災認定を受けるためにも、やはりパワハラが認定されるためには証拠が必要となります。

そこまでの事態ではなくても、その会社にいるべきかどうか、自分は今どんな状況にあるのかを冷静になって見つめて、対策を考えるためにも、記録に残し、見直してみることは大変有効です。

また今はそこまででなくても、徐々に悪質に発展していくケースもあります。そのように自分を守る姿勢を整えていくこと自体が、パワハラをさせないことにも繋がっていきます。



やはり、泣き寝入りして野放しせず、対策を講じて行くことが、パワハラに負けないために大事なのです。


⑴ 録画や録音

一番有効な証拠は、録画やボイスレコーダーでの録音です。揺るぎない事実を示すことができます。今はスマホにも録音機能がついているので特別な機器を準備する必要もありません。

あなたに対する暴言や暴行だということがわかるように、あなたの声やあなたの名前も入っていることが望ましいでしょう。それがわかりにくい場合には、前後状況や職場環境の説明になるものなど、他の証拠と組み合わせていくことになります。

実際にパワハラだといえる場面以外にも、前後の状況や普段の接し方など、やはり証拠は多いに越したことがありません。一つの状況だけではパワハラとまでは言えない…というようなやり取りでも、複数回繰りかえされていることによって、パワハラにあたるとされることが多いのです。

録画や録音については、それ自体が違法なのではないか、と恐れている人も多いようです。しかしそれは恐らく、捜査機関が行う「盗聴」と混同してしまっているのではないでしょうか。

国家権力という強大な力によって個人に制裁を加えていく刑事事件においては、権力に対して非常に弱い立場にある国民の権利を保護するために、たしかに不当な「盗聴」は許されておりません。

しかしながら、個人同士の会話を、当事者の一方が録音すること(盗聴とは異なり「秘密録音」といわれます)は、相手方が話の内容をどう扱うかは当人に委ねているとされるので、違法とはされません。

もちろん、どんな秘密録音も適法かと言えば、そうではなく、嫌がらせなど反社会的な録音や不必要で不当な録音が許されるわけではありませんが、弱い立場の労働者が、ほかに中々有効な証拠手段も難しい中、パワハラの事実を証明するために仕方なく行う録音は、実際証拠として認められています。



この点、詳しくは、民事事件か刑事事件かで、証拠とすることができるかという証拠能力の判断基準が異なるのですが、ここでは民事事件(労働審判もこれに含まれます)を念頭に説明していきます。


⑵ メール・LINE・電話の記録

相手から送られたメールやLINEなどの内容に、侮辱的文言や、脅し文句が記載されている場合には、これらも証拠とすることができます。

電話はその内容を録音しておくのがいちばんですが、それが出来なかった場合でも、就労時間外での執拗な受信記録などは証拠になるでしょう。





⑶ パワハラ被害を写した写真や動画

物を投げつけられた形跡や暴行がある場合には、その現場や怪我の状況を写真や動画に残しておきます。それが、パワハラであることを証明するためには、さらに、その現場を見ていた第三者の証言・メモ・動画説明や被害を受けた状況の詳細なメモも残しておくとよいでしょう。弱い証拠は複数の証拠で補強していく必要があるのです。


⑷ 医師の診断書

パワハラ行為により負傷したような場合やストレスでうつ病などの精神疾患を発症したような場合は、医師の診断書を用意しておきましょう。パワハラ被害について医師に説明し、パワハラ行為と負傷や疾患との間に因果関係があることを診断書に記載してもらうとなおよいでしょう。そこまでは書いてもらえないかもしれないので、この場合にも、第三者の証言や被害状況の詳細なメモを残して補強しておきましょう。


⑸ 日記やメモ

日記

やメモは、それ自体としては、証明力は弱いです。機械で記録される客観的証拠とは異なり、後で自在に変更したり捏造できるものなのでやむを得ません。

しかし、これらも数を揃えて、第三者の証言や写真やボイスメモなど他の証拠と積合せていくことにより、事実であることの証明に繋がるので、コツコツ集めていきましょう。



「いつ」「どこで」「誰に」「何を」「どんな風に」(5W1H)を言われたか、されたか等、覚えているうちにメモしたり、スマホでメモ代わりに録音するなど、出来ることをしておきます。スマホのボイスレコーダー機能は、日付と時間が一緒に記録されるので、お勧めです。



⑹ 第三者機関に相談した記録

社内の上層部に相談した記録も証拠になりますが、社内でパワハラをもみ消そうとした場合には、期待できませんので、労働基準監督署や法律相談など外部機関に相談した場合の方が客観的な証拠としては確実です。

パワハラで会社を辞めたい! ~退職へ向けて② すべき対応を理解しよう~





会社に居ながらの対策

パワハラをするような環境では、能力の向上は難しいし、そんな上司をのさばらせておくとか、経営者自体がパワハラの本人であるような会社からは、早く退散した方があなたのためにはいい気はします…

しかし、色々な事情で、すぐに転職とはいかない場合もあるでしょう。準備もなく急に会社を辞めてしまうことにより、精神的に不安的なってしまうことや受給できる手当を受けられないこともあります。

そのような場合には、少しずつ体制を整えて、一歩一歩対策していくのもよいでしょう。

動物や人間が危険な状況に遭遇した時にとれる行動は次の5パターンといわれています。
①無視 ②回避 ③屈服 ④逃避 ⑤戦う

さぁ、あなたはこのうちどの行動に出ますか?




⒈ 無視して自分の仕事をする

無視を選択する場合、自分の幼稚さゆえに怒鳴り散らしている上司は、相手にせず、自分がすべき業務は淡々とこなして、文句言われる筋合いないよとばかりに、帰宅することができます。

実際、同じ職場にいても、パワハラ被害に遭っていない人は、このように相手にしないで、自分は必要な経験と知識を得るために今はこの会社にいるのだと、割り切って仕事することが出来ているのかもしれません。

しかしながら、そのように気丈で自分軸をしっかり持てている方は、退職代行のページを開いていないと思いますので、こういう人もいる、という位にしておきます。

⒉ 他の理由での移動・休職

回避とは、「パワハラである!」という声は上げずに、パワハラ状態を避けて行く方法で、他の理由により違う現場や職種への移動や休職を申し出ることが考えられます。

2−1他の理由による移動

パワハラを原因としない病気や怪我、家族の病気や怪我、引越し、他の職種を経験してみたい、習い事の場所との兼ね合い…などの理由での移動を申し出て、パワハラ現場を避ける行動に出ることができます。

その会社でまだしたいことがある人やパワハラする人以外にはその職場に不満のない人などは、この対策により移動が叶えば、納得して仕事が続けられるでしょう。

2−2心身の不調による休職

パワハラが全ての原因であるとまでは明確に証明できないけれど、うつになったりしてどうしても仕事に行くことができない方は、まずは休職して心身を整えることも出来ることです。

心身に不調をきたしている状態では、人は冷静に合理的な判断をすることが出来なくなってしまいます。そんな状態で、ただ退職してしまうと、より不安や後悔に苛まされる場合もありますので、まず休職を申し出ることは、最初にできる対策です。

一旦時間をとり、恐怖で理性的ではいられない状況から離れ、休みながら、本当にその会社での仕事を続けたいのか、本当にしたい仕事は何なのか、パワハラをする人に対してできることはないのかについて、ゆっくり考えてみたり、誰かに相談したりしてみましょう。

本当にしたい仕事なのかどうかを考えるにあたっては、退職代行Jobsの顧問弁護士のコラム今ある「仕事」という言葉へのイメージを変えて、もっと仕事を楽しくする③

もご参照ください。

会社に認められた休業中でも、その間給与が支払われない場合や、給与の額が傷病手当より低い場合には、協会けんぽから「傷病手当金」が給付されることがあります。その手続きについては、本シリーズ③をご参照ください。

⒊ 現状のまま泣き寝入りする

屈服とは、自分を守るべき行動に出ることなく、相手の言いなりになって従うか、動物的状況では「食われる」という行動です。

もし今、もう会社に行くのもツラくてツラくて仕方がない、もう顔も合わせたくない、考えただけで恐怖である…という事態にまでなっている方は、この屈服を続けてきた結果なのかもしれません。

悪質なパワハラやイジメの行く末は、被害者の自殺や心身障害であることは、もう珍しくない事実です。このような状態になっている方は、一刻も早く、第三者機関などに相談するなどして、まずはその状態から④逃避しましょう。

逃げるのが良いとか悪いとか言っている場合ではありません。まずはあなたの心身の健康を確保することが大事です。それ以上に大切なものなんて、この世にはないのです。

このような時に、誰々に悪い…とか、体裁が…とか、二の次であることを考えて、自分の精神や身体をこれ以上蝕んでいくようなことはやめましょう。一人ではありません。相談できるところも対策も色々とあります!



⒋ 会社を辞める

逃避は、退職してしまうことです。ここで、「逃げる」とか「逃避」とかいうと、まるで悪いことのように感じてしまう人もいるようです。

しかし、動物として考えて見て下さい。食われてしまうような状況で逃げることは悪いことですか??身を守るための当たり前の行為です。恥ずべきことでもなんでもありません。

確かに、退職の意思も伝えることなく、いわゆるトンズラしてしまうことは良くないと思います。残された人たちは処理をどうしたらいいのか非常に困ります。

しかし、退職すること自体は、個人の権利として法律上認められていることで、きちんと退職の意思を示せば、直ぐにもしくは一定の期間経過後に、相手方の意思とは関係なく労働契約は解除されます。

これが禁止されたら、歴史上存在した「奴隷的拘束」(憲法18条)ともなりかねないのです。

もちろん、少し辛いだけで直ぐに逃げる癖がついてしまうのは、人生の成長での問題はありますが、できることはしてみてもダメだったり、非常に悪質な相手からは逃げるのも正当な行為といえるでしょう。

状況を判断して、自分のためになる、自分が本当に歩みたい人生のために、自分で決断して人生の舵を切るという行動は、人生で大切な経験と成長になるでしょう。

パワハラを理由に退職する場合にできることについては、シリーズ3作目にまとめたいと思います。

⒌ パワハラであることに声を出していく

戦うとは、「あの人の行為はパワハラだ!」と声を上げて、行動していくことです。
具体的には、いくつかの方法があります。

5−1本人に伝えてみる

信じられないかもしれませんが、パワハラ行為をしている本人がパワハラをしている自覚がないということもあるようです。

時代や環境的に、自分も叱咤されて育ったような人達は、注意や指導をする場合には、怒鳴ったり、暴言を吐いたりするような行為は当たり前といったような人達ですかね…

また、シリーズ1作目の何がパワハラか?で記載したように、「しつこく個人的な事項について話してくる」などというケースは、本人は深い仲になるために悪気なくしていることもあります。

このようなケースでは、本人に伝えて自覚を促すことがパワハラ状況の改善に対して有効な場合があり、本人のためになる親切な行為でもあります。

もちろん、逆に指摘されて怒るようなタイプかどうかや伝え方の判断が大事です。

コミュニケーション術として、「私は〜」を主語にした「I(アイ)メッセージ」と「あなたは〜」を主語にした「You(ユー)メッセージ」というのがあります。

相手に自分の意見や要望を伝える時には、「私はこう思うのです」とか「私はこう感じるのです」という、「私は〜」を主語にした「I(アイ)メッセージ」で伝えるのが基本であり、相手の気持ちを侵害しにくいといいうものです。

例えば、「私は、会社であまり彼氏のこととか聞かれると嫌な気分がするのです」とか「私は、大声で怒鳴られると、恐怖を感じて仕事に手がつかなくなるのです。」という風に、自分はこうなってしまうのです、ということを訴える言い方です。

単に、「私は」どう感じるかを述べているだけなので、穏やかに述べている限り、正当な意見の表明です。

これに対して、例えば「あなたのその行為はパワハラです」とか「相手の個人的なことを根掘り葉掘り聞くのは、相手を不快にさせる行為だと思います」とかいうのは、Youメッセージになります。

「私は、あなたの行為はパワハラだと思います。」これは一見、I(アイ)メッセージのように見えますが、相手(You)の行為がどうであるかをあなたがジャッジしていることになるので、Youメッセージになります。

Youメッセージを投げかけれた場合、素直に受け止めれる人もいますが、多くの人が「自分は非難された」「自分はジャッジされた」と受け取り、気分を害して敵対の方向に向いてしまうことになりやすいというものです。

確かに、同じ状況下でもパワハラと感じる人と感じない人がいたりするので、一方的に決めつけるような言い方は、良くないでしょう。

あくまでも、「自分はそういう言われ方は慣れていないので、怖く感じてしまい、業務に支障をきたしています」というようなやんわりした伝え方がいいのではないでしょうか。

可能なら、その時の状況を録音しておけば、あなたが正当に改善を求めた事実や、あなたの訴えに相手がどう反応して、どのような対応をしたかの証拠にもなります。

5−2 同僚や先輩に相談してみる

同じ上司に悩んでいる人達で仲間を作っていくのも得策でしょう。皆で話し合って、証拠を集めたり、社内のさらに上層部に相談を持ちかけていくなどして、改善の方向に進めて行きやすくなります。

大切なことは、一人で抱え込まないことです。おびえず、恥ずかしがらず、殻に閉じこもらないで、言える人には話をしていきましょう。

5−3 社内のさらに上層部やコンプライアンス担当部署に相談する

最近は、社内にパワハラについての規定や対処法や担当部署をおくことが、行政より求められています。

しっかりしている会社では、担当部署や人事が間に入ってくれることにより、注意勧告や人事異動などにより、事態が改善することもあります。

会社だって、良い会社になりたいのであり、ブラック企業という汚名を被るわけにもいきませんし、行政の介入だって考えられますので、それなりの対策を講じてくれることは多いでしょう。



5−4 第三者機関に相談する

しかし、中小企業で人事の力が弱く、コンプライアンスの徹底していない企業では、この手段が効かないこともあります。

その場合には、然るべき機関や弁護士などの専門家に相談するのが良いでしょう。

主な相談場所を記載しておきます。

これらの相談窓口で、相談した実績も、あなたが積極的に外部に相談して、パワハラの改善に努めた証拠になります。

5−5 労災申請をする

パワハラが直接の原因で、心身に被害が生じている場合には、在籍しながら休業もしくは退職して、労災申請をすることも可能です。これについては、次回シリーズ3作目で説明することにします。この時にも、しっかりした証拠が大事になってきます。



5−6 労働審判や民事訴訟を起こす

パワハラが直接の原因で心身に被害が生じた時に、損害賠償などを求めていく手段がありますが、もちろんこの場合には、しっかりした証拠と専門家のサポートが必要となってきます。お金や気力や時間も必要になってきます。

まずは、前記の法テラスやお近くの市町村の法律相談や、最近では初回無料相談を行っている弁護士事務所もありますので、専門家の意見も聴きながら、そこまでする価値があるのかについて、しっかり検討されてください。

5−7 刑事告訴する

前作に記載したように、悪質なパワハラは刑事上の犯罪になる場合があります。あまりにも悪質な場合には、他に被害者を増やさないためにも、このような対処も考えられるでしょう。

この場合に、証拠を収集するのは警察や検察の役目ですが、当事者である被害者が有効な証拠を持っていなければ、なかなか立証が難しくなってきますので、当事者が確保した証拠は重要になります。

パワハラを一人で抱え込まない

以上、パワハラに遭遇した時に、どのような証拠を集めておくと良いのかや、誰にどのように相談していくことができるかについて説明しました。

大事なことは、一人で抱え込んで、あなたの健康をこれ以上害さないこと。そしてことではないでしょうか。



沢山の人達や機関がパワハラの蔓延を防ごうと頑張ってくれています。しかしながら、被害者が事態を把握して、声を上げて相談したり、当事者として証拠を集めて置かなければ、そのような方達も手の差し伸べようがありません。

自分の状況を改善していく意図を持って、できることから行動に移して、あなたの人生を取り戻していきましょう!動けば必ず人生は変わっていきます。