労働問題を解決したい場合に、弁護士へ依頼する方法も一つの選択肢です。
しかし、弁護士に依頼するとなると「どの位の費用がかかるのか?」と不安に感じる方もいるでしょう。
そこで、本記事では、労働トラブル別の弁護士費用の相場について解説します。
法律事務所の一般的な「相談料・着手金・成功報酬」についても解説しますので、参考にしてください。
目 次
弁護士への依頼にかかる費用の内訳
弁護士へ相談や依頼をした際は、相談料・着手金・報酬金といった弁護士費用が発生します。
- 相談料|30分5,000円~
- 着手金|10万円~30万円
- 成功報酬金|獲得金額の10%~15%
- 日当・実費|ケースによって異なる
実際に支払う弁護士費用は法律事務所によっても異なりますが、ここでは弁護士への依頼で必要となる一般的な弁護士費用を解説します。
具体的な費用の目安について、以下で確認していきましょう。
相談料|30分5,000円~
相談料は弁護士に法律相談をする際に発生する費用で、相場は30分あたり5,000円です。
多くの場合、時間制で料金が決められており、相談にかかる時間に対して30分や1時間単位で計算されます。
初回の相談は無料としている法律事務所も多いため、相談費用を抑えたい人は初回無料の法律相談を利用するとよいでしょう。
相談時は、限られた時間内で必要事項を伝えるために、相談したい内容やトラブルに至った経緯を事前にまとめておくとスムーズです。
着手金|10万円~30万円
弁護士に正式に依頼する際に必要となるのが着手金です。
問題の複雑さや得られる利益の見込みなどによっても異なりますが、一般的な相場は10万円~30万円程度です。
着手金は、依頼した内容の結果にかかわらず支払う必要があり、希望した結果にならなかったとしても返金はされません。
なお、着手金を無料にしている「完全成功報酬型」の法律事務所もあります。
成功報酬金|獲得金額の10%~15%
成功報酬金は、弁護士への依頼によって特定の成果を得た場合に支払う費用です。
獲得金額の○%といった割合で設定されているケースが多く、一般的な相場は獲得金額の10%~15%程度です。
たとえば、弁護士に依頼した結果100万円の未払い賃金を回収した場合、成功報酬金は10万円~15万円程度となります。
従業員としての地位が争点となっている場合など、事件解決時に金銭が発生しない依頼内容では、事前に決められた金額が成功報酬金となります。
成功報酬金の設定は法律事務所によって異なるため、依頼前に確認しておくようにしましょう。
日当・実費|ケースによって異なる
日当は、弁護士が所在している事務所を離れて活動する際に支払う費用です。
相場は1時間あたり1万円、半日では3万円~5万円、1日では5万円~10万円程度になります。
実費は、交通費や裁判所に納める印紙代、書類を郵送する際の切手代など、事件の処理を進めるために必要となる費用です。
一般的には数万円で済むケースが多いですが、依頼する内容によっても異なるため、事前に大まかな見積もりを提示してもらうとよいでしょう。
しかし、実費には予測しにくい要素も含まれるため、予備費用としてある程度の余裕をもたせておくのがおすすめです。
【労働トラブル別】弁護士に依頼するとかかる費用相場
トラブルの原因となる労働問題の内容は多岐にわたり、その性質に応じて弁護士費用も変わります。
ここでは、以下の労働トラブル別で弁護士費用相場を解説していきます。
- 残業代請求|獲得金額の15%~30%
- 不当解雇|獲得金額の15%~30%
- 労働災害|獲得金額の15%~30%
- 労働審判|着手金30万円~
- パワハラ・セクハラ|獲得金額の15%~30%
- 労働訴訟|状況によって異なる
それぞれの労働トラブルで弁護士費用がどの程度かかるのか、以下で詳しく見ていきましょう。
残業代請求|獲得金額の15%~30%
残業代請求は、労働者が所定の労働時間を超えて働いたにもかかわらず、適切な残業代が支払われていない場合におこなわれます。
着手金と成功報酬金の相場は、以下のとおりです。
着手金 | 無料~10万円程度 |
成功報酬金 | 獲得金額の15%~30%程度 |
残業代請求の着手金に関しては、無料で依頼を受け付けている法律事務所も多いです。
成功報酬金は回収した金額の15%~30%が相場ですが、回収額や依頼する法律事務所によっては「10%+18万円」など割合のほかに定額を支払うケースもあります。
不当解雇|獲得金額の15%~30%
不当解雇とは、正当な理由のない解雇や、労働基準法や就業規則に違反した一方的な解雇などを指します。
不当解雇による弁護士費用の相場は、以下のとおりです。
着手金 | 無料~30万円程度 |
成功報酬金 | 獲得金額の15%~30%程度 もしくは決められた金額 |
着手金・成功報酬金ともに、法律事務所によって幅広い金額設定となっています。
不当解雇の場合は事件解決によって得られる金銭的な利益がないケースも多いため、「賃金1ヵ月分」「20万円」など独自の基準が設けられている場合もあります。
弁護士を選ぶ際は、相談時に着手金と成功報酬金がどのように決まるのか、おおよそどのくらいかかるのかを確認するようにしましょう。
労働災害|獲得金額の15%~30%
労働災害のトラブルでは、労働者が職場で受けた傷害や病気に対する補償が主な争点となります。
会社に対して損害賠償請求する場合、着手金と成功報酬金の相場は以下のとおりです。
着手金 | 5~30万円程度 |
成功報酬金 | 獲得金額の15%~30%程度 |
労働災害の場合、損害賠償請求の費用と労災保険の申請費用が別計算となるケースがあります。
労災保険の申請も依頼したい場合には、総額の見積もりを提示してもらったうえで検討するのがおすすめです。
労働審判|着手金30万円~
労働審判は労働問題を迅速に解決するための手続きであり、賃金不払いなどが生じた際に利用されます。
労働審判を依頼した際の弁護士費用相場は、以下のとおりです。
着手金 | 30万円程度 |
成功報酬金 | 獲得金額の15%~20%程度 もしくは決められた金額 |
着手金については、30万円程度に設定している法律事務所が多いです。
成功報酬金の相場は、事件解決によって金銭的な利益を得た場合は獲得金額の15%~20%程度となります。
金銭以外の利益を得た場合は、賃金1ヵ月~3ヵ月分など決められた金額を支払うのが一般的です。
パワハラ・セクハラ|獲得金額の15%~30%
パワハラやセクハラの被害を訴える場合、被害者は通常、損害賠償として精神的苦痛に対する慰謝料を請求します。
このようなケースの弁護士費用相場は、以下のとおりです。
着手金 | 10~30万円程度 |
成功報酬金 | 獲得金額の15%~30%程度 |
たとえば、ハラスメント加害者から100万円の慰謝料が支払われた場合、弁護士への成功報酬金は15万円~30万円となります。
パワハラ・セクハラは感情的になりやすい問題のため、対応実績や経験豊富な弁護士に依頼するのがおすすめです。
労働訴訟|状況によって異なる
労働訴訟は、未払い賃金・不当解雇・ハラスメントなど、さまざまな労働問題に対応するために裁判所を通じておこなわれる法的手続きです。
弁護士費用は事件の状況や利益として得た金額(経済的利益)などによって異なりますが、日弁連の旧弁護士報酬基準に沿って設定されているのが一般的です。
着手金 | 経済的利益の額が300 万円以下の場合:8%
300 万円超え3000 万円以下の場合:5%+9 万円 3000 万円超え3 億円以下の場合:3%+69 万円 3 億円を超える場合:2%+369 万円 ※着手金の最低額は10 万円 |
成功報酬金 | 経済的利益の額が300 万円以下の場合:16%
300 万円超え3000 万円以下の場合:10%+18 万円 3000 万円超え3 億円以下の場合:6%+138 万円 3 億円を超える場合:4%+738 万円 |
日弁連の旧弁護士報酬基準とは、過去に日弁連が定めていた弁護士費用の基準ですが、今でもこの基準を採用している法律事務所は多くあります。
しかし、あくまでも目安となるため、実際に支払う費用は依頼する法律事務所に確認するようにしてください。
労働問題の弁護士費用を抑える方法
労働問題の弁護士費用を抑える方法として挙げられるのは、主に次の5つです。
- 無料相談に対応している弁護士を選ぶ
- 成功報酬金額の割合が低い弁護士を選ぶ
- 完全成功報酬の弁護士を選ぶ
- 分割払いにできるか相談する
- 法テラスの民事法律扶助制度を利用する
労働問題において弁護士に法的支援を求める際、費用は大きな懸念事項のひとつでしょう。
弁護士費用を抑えるための具体的な方法について、以下で解説していきます。
無料相談に対応している弁護士を選ぶ
最近では、初回の法律相談を無料としている弁護士や法律事務所が増えています。
無料相談を利用すると、自身のケースがどのように扱われるか、どの程度の費用が見込まれるかを事前に把握できます。
また、複数の弁護士に相談して、もっとも適切なサポートと条件を提供してくれる弁護士を選ぶことも可能です。
無料相談に対応している弁護士を選ぶのは、初期費用を節約するだけでなく、弁護士との相性を試す機会にもなるでしょう。
成功報酬金額の割合が低い弁護士を選ぶ
弁護士費用を抑えたい場合には、成功報酬金額の割合が低い弁護士を選ぶのもおすすめです。
労働問題における成功報酬金の割合は経済的利益の15%~30%程度が相場ですが、この報酬割合の設定は弁護士や法律事務所によって異なります。
成功報酬金が30%の弁護士を選ぶよりも、15%の弁護士を選ぶほうが弁護士費用を安く済ませられる可能性が高いです。
なお、最終的な費用を抑えるには、成功報酬の割合だけでなく、着手金や実費も含めて総合的に判断するようにしましょう。
完全成功報酬の弁護士を選ぶ
弁護士によっては、着手金を一切要求せず、事件解決時にのみ報酬を受け取る「完全成功報酬」型の料金体系を採用している場合があります。
完全成功報酬の弁護士を選べば、初期費用の負担を大幅に軽減したうえで弁護士に依頼できるでしょう。
ただし、完全成功報酬の場合、着手金の分を成功報酬金に上乗せしているケースもあるため、割合は事前にチェックしておく必要があります。
費用の不安を軽減するために、料金体系が明確な弁護士を選ぶようにしましょう。
分割払いにできるか相談する
一括で弁護士費用を支払うのが難しい場合、分割払いにできるか相談するのもひとつの手段です。
依頼時に支払う着手金は一括払いとしている法律事務所が多いですが、支払いが困難な事情を説明すれば柔軟に対応してくれる可能性もあります。
分割払いを希望する場合は、相談時に弁護士に確認してみるといいでしょう。
なお、全ての弁護士が分割払いに対応してくれるわけではないため、断られた場合には別の対策を考える必要があります。
法テラスの民事法律扶助制度を利用する
法テラスの民事法律扶助制度を利用するのも、弁護士費用を抑える方法のひとつです。
民事法律扶助制度とは、経済的に余裕がない人を対象に、無料法律相談サービスや弁護士費用の立て替えをおこなう制度です。
たとえば、法テラスで労働審判を依頼した際の弁護士費用の目安は、以下のようになっています。
着手金 | 110,000円程度 |
成功報酬金 | 請求額3000万円まで:経済的利益の10%
経済的利益がない場合:88,000円程度 |
実費 | 20,000円程度 |
民事法律扶助制度の立て替えを利用した場合、原則として月額5,000円から10,000円程度の金額で返済します。
なお、法テラスの民事法律扶助制度には収入や資産が一定額以下などの要件が規定されているため、利用する際は一度問い合わせて確認してみるのがおすすめです。
労働問題の弁護士費用に関するよくある質問
労働問題を法的に解決する際には、弁護士費用についての多くの疑問が生じます。
- 労働問題の弁護士費用はだれが払うのでしょうか?
- 弁護士への相談にはどれくらいの費用がかかりますか?
- 労働審判の弁護士費用は相手方に請求できますか?
- 完全成功報酬型の弁護士とは何ですか?
よくある質問に以下でひとつずつ回答していくため、ぜひ参考にしてみてください。
労働問題の弁護士費用はだれが払うのでしょうか?
労働問題における弁護士費用は、基本的に依頼者自身で支払う必要があります。
依頼者が支払う弁護士費用には、相談料・着手金・成功報酬金・実費・日当などの費用が含まれます。
経済的に弁護士費用の支払いが難しい場合には、当記事で紹介した弁護士費用を抑える方法を参考にしてみてください。
弁護士に依頼すべきか悩んでいるときは、初回の無料法律相談に対応している法律事務所に相談するのもおすすめです。
弁護士への相談にはどれくらいの費用がかかりますか?
弁護士への相談料は弁護士や法律事務所によって異なりますが、一般的に30分あたり5,000円、1時間あたり10,000円が相場です。
初回の相談に限り、無料で対応している法律事務所もあります。
また、経済的に余裕のない場合には、法テラスの民事法律扶助制度を利用して無料法律相談を受けられる可能性もあります。
弁護士に相談する費用を抑えたい人は、無料で相談できる方法を検討してみてください。
労働審判の弁護士費用は相手方に請求できますか?
労働審判における弁護士費用は、原則として依頼者自身で支払う必要があります。
日本では弁護士費用の敗訴者負担制度は認められていないため、相手に弁護士費用の請求はできないのが原則です。
しかし、労働災害など会社側の債務不履行を理由に賠償を求める場合であれば、例外的に弁護士費用が損害として認められる可能性もあります。
とはいえ、労働審判で争われる問題はあくまでも労働問題であるため、労働審判で相手に弁護士費用を請求できるケースはほとんどありません。
完全成功報酬型の弁護士とは何ですか?
完全成功報酬型の弁護士とは、依頼された法的な問題が成功した場合のみ報酬を受け取る報酬形態の弁護士を指します。
通常であれば、問題を依頼する時点で着手金を支払いますが、完全成功報酬型の弁護士の場合、着手金は無料となっています。
依頼者は初期費用の負担なしで弁護士のサポートを受けられるため、経済的なリスクを抑えながら法的手続きを進められるのが利点です。
しかし、完全成功報酬型の場合は成功報酬の割合が比較的高めに設定される傾向があるため、契約内容は事前に確認し納得したうえで依頼するようにしましょう。
さいごに|費用に不安がある場合は複数の弁護士に相談してみましょう
労働問題を弁護士に依頼するにあたって、弁護士費用の支払いは避けて通れない問題ですが、費用を抑える方法も複数存在します。
費用に不安がある場合は、無料相談などを利用して、複数の弁護士に相談するのがおすすめです。
弁護士によって料金体系や支払い条件などが異なるため、複数の弁護士に相談することで自身のニーズにもっとも合った選択が可能になるでしょう。
信頼できる弁護士を見つけ、費用の負担を適切に管理しながら、労働問題の解決を目指してみてください。