労働問題を解決したいときは、弁護士の無料相談を利用するのがおすすめです。
弁護士会や各自治体などの無料相談を利用すると、弁護士のアドバイスを受けられるので、労働問題の解決を目指せます。
ただし、弁護士に相談する機会は滅多にないので、以下のような疑問や不安もあることでしょう。
- 弁護士の無料相談はどの窓口を利用するとよい?
- 弁護士に労働問題を相談するメリットは何?
- どんな弁護士に労働問題を相談するとよい?
本記事では、弁護士に労働問題を無料相談するメリットや、弁護士の選び方などをわかりやすく解説します。
目 次
労働問題を弁護士に無料相談できる窓口4選
労働問題を弁護士に無料相談するときは、以下の窓口を利用してください。
窓口によっては無料相談の回数制限があるので、それぞれの特徴を理解しておきましょう。
弁護士会の法律相談センター|仕事の休憩時間などに相談したい方
弁護士会の法律相談センターは全国に拠点があり、弁護士会館や商業施設、オフィスビルなどに設置されています。
交通の利便もよいので、市街地で働く方は仕事の休憩時間に相談できるでしょう。
法律相談は基本的に有料ですが、労働問題などの特定分野は無料相談にしている法律相談センターもあります。
なお、相談方法は面談のみとなっており、相談日や時間帯が地域ごとに異なるので、必ず公式ホームページで確認してください。
山間部や過疎地など、近くに法律事務所がない方は、定期巡回の法律相談を利用してみましょう。
【参考元】全国の弁護士会の法律相談センター
法テラス|経済的な余裕がない方
法テラスは民事法律扶助業務をおこなっており、経済的な余裕がない方でも弁護士に労働問題を相談できます。
相談者が以下の収入要件や資産要件などを満たすと、30分×3回までの無料相談と弁護士費用の立替払いに応じてもらえます。
世帯人数 | 大都市以外の月収 | 大都市の月収 | 資産 |
単身者 | 18万2,000円以下 | 20万200円以下 | 180万円以下 |
2人 | 25万1,000円以下 | 27万6,100円以下 | 250万円以下 |
3人 | 27万2,000円以下 | 29万9,200円以下 | 270万円以下 |
4人以上 | 29万9,000円以下 | 32万8,900円以下 | 300万円以下 |
なお、法テラスは弁護士を指名できないため、担当弁護士の経験が浅く、注力分野が異なっている可能性があります。
民事法律扶助制度を利用するときは、収入要件などに審査に1ヵ月程度かかる場合があるので、問題解決を急ぎたい方には向いていないかもしれません。
【参考元】法テラス
各自治体の法律相談窓口|ひとまず相談だけしてみたい方
各自治体の法律相談窓口を利用すると、弁護士に労働問題を無料相談できます。
無料相談の時間は概ね30分程度ですが、予約の有無や相談日が自治体ごとに異なるので、広報誌や公式ホームページで確認してください。
なお、人口の少ない地域は相談日が月2~3回程度になっており、担当弁護士の注力分野が異なる場合もあります。
相談会場では弁護士との委任契約を結べないので、「ひとまず専門家の意見を聞いてみたい」という方に向いているでしょう。
弁護士に労働問題の解決を依頼したいときは、法律事務所に直接相談してください。
ベンナビ労働問題|労働問題に注力した弁護士を探したい方
ベンナビ労働問題は弁護士のポータルサイトになっており、労働問題に注力した弁護士のみ登録されています。
サイト内の検索機能は地域と相談内容を絞り込めるので、会社や自宅、最寄り駅などに近い法律事務所がすぐに見つかるでしょう。
また、登録弁護士のほとんどが初回分を無料相談にしており、着手金無料の弁護士も登録されています。
弁護士の経験年数や労働問題の解決事例、弁護士費用などを知りたいときは、各法律事務所の詳細ページを参照してください。
女性弁護士に相談したい方や、外資系企業の労働問題を解決したい方も、ベンナビ労働問題で弁護士を探してみましょう。
【参考元】ベンナビ労働問題
弁護士に労働問題を無料相談・依頼するメリット
弁護士に労働問題を無料相談するときや、トラブル解決を依頼した場合は以下のメリットがあります。
労働問題は自分で解決できない場合が多いので、困ったときは弁護士に相談してみましょう。
労働契約違反などを判定してもらえる
弁護士に解雇や減給、長時間労働などの問題を相談すると、労働契約違反かどうか判定してもらえます。
労働契約は労使間で遵守しなければなりませんが、会社側が違反しているケースが少なくありません。
また、会社側が労働関係法を理解しておらず、「短時間の残業は単なる居残りだ」などと主張する場合もあります。
法定労働時間の超過や賃金の不払い、性や国籍の違いによる差別などがあれば、詳しい状況を弁護士に伝えてください。
会社側との交渉を代行してもらえる
弁護士は依頼者の代理人になれるので、会社側との交渉を代行してもらえます。
労働組合が組織されていれば団体交渉できますが、組合のない会社は労働者の立場が弱く、「交渉を打診すると不利な扱いになるのでは?」といった懸念もあります。
また、労働環境を改善したくても、ワンマン経営の会社は交渉のテーブルについてくれない場合もあるでしょう。
会社と対等な立場で協議したいときは、弁護士に代理交渉を依頼してください。
慰謝料の算定や請求を依頼できる
パワハラやセクハラなどの労働問題が発生すると、会社や加害者に慰謝料を請求できます。
しかし、ハラスメントの被害が明らかであっても、何を基準に慰謝料を計算してよいかわからず、請求が放置されているケースも少なくありません。
慰謝料の額は被害状況やハラスメントの期間などを考慮するため、専門的な知識が必要です。
また、妥当性のある慰謝料を算出しても、会社や上司を相手取った請求には勇気がいるので、弁護士に任せたほうがよいでしょう。
不払いの給与や残業代を回収してくれる
賃金の不払いが発生しているときは、弁護士に回収を依頼してください。
給与や残業代は労働の対価になるため、不払いは許されませんが、経営者や上司から圧力がかかり、サービス残業が当たり前になっている会社もあります。
業務の処理遅延が発生した場合、「休日出勤で取り戻せ」などと命令し、給与を支払わないケースもあるでしょう。
労働者側から請求しても会社が賃金を支払わないときは、弁護士に回収してもらいましょう。
証拠集めのアドバイスを受けられる
労働問題を弁護士に依頼すると、証拠集めのアドバイスを受けられます。
たとえば、給与明細書や源泉徴収票は賃金不払いの証拠になりますが、すでに廃棄しているときは、賃金規定や就業規則などを確認しなければなりません。
場合によっては勤怠管理のデータやシフト表なども必要でしょう。
また、労働災害が発生したときは、監視カメラのデータをUSBメモリに移し替えるなど、証拠の保全方法も教えてもらえます。
労働問題を弁護士に無料相談するときのポイント
労働問題を弁護士に無料相談するときは、以下のポイントを押さえておきましょう。
ある程度の情報がなければ弁護士も動きにくいので、資料の準備も重要です。
労働問題の発生経緯や関係者を整理する
労働問題を弁護士に相談する場合、まずトラブルの発生経緯や関係者を整理してください。
たとえば、危険個所を以前から指摘していたにも関わらず、労災の原因になったときは、上司に意見した内容を時系列にまとめる必要があります。
現場に居合わせた社員と直属の上司、作業工程の管理者や安全衛生面の責任者など、関係者もすべて整理しておくとよいでしょう。
なお、関係者が多いときは相関図を作成し、加害者・被害者などを書き込むと、弁護士に説明しやすくなります。
資料を準備しておく
弁護士に労働問題を相談する場合、資料の準備が重要です。
資料があると勝ち負けを予測できるため、解決方針を立てやすくなります。
手書きのメモが重要な資料になるケースもあるので、トラブルに関連した書類はひとまず弁護士に提出してみましょう。
相談したい労働問題の内容を明確にしておく
労働問題を弁護士に無料相談するときは、何を解決したいのか明確にしておきましょう。
パワハラやセクハラの相談であれば、加害者と和解して今までどおり働きたい、または慰謝料を支払うまで徹底的に争うなど、明確な方向性が必要です。
解決方針を弁護士任せにすると、「望んでいない結果になった」という事態になりかねないのできちんと確認しておきましょう。
労働問題を無料相談するときの弁護士の選び方
労働問題を無料相談する場合、弁護士は以下の基準で選ぶとよいでしょう。
来所不要の弁護士や、休日・夜間対応の弁護士を選ぶと、労働問題の早期解決を目指せます。
労働問題に注力していること
弁護士の注力している分野はそれぞれ異なるので、必ず労働問題に注力している弁護士に相談してください。
法律事務所のホームページを参照すると、弁護士の注力分野と解決実績、具体的な解決事例などがわかります。
労働問題に注力する弁護士が近隣に複数いるときは、年齢や経歴も判断材料になるでしょう。
注力分野が異なる弁護士に相談すると、労災認定を受けられない、不当解雇を防止できないなど、さまざまなリスクが発生するので必ず確認してください。
休日や夜間でも相談できること
労働問題を無料相談するときは、休日や夜間対応の弁護士を選んでください。
退社時刻が遅い方は平日の相談が難しく、夜勤中のトラブルは相談窓口が限定されるため、労働問題の解決が遅くなってしまうでしょう。
休日対応の弁護士であれば、トラブルの原因などをじっくり相談できます。
また、夜間対応の弁護士を探しておくと、ナイトワークの労働問題にも対応してもらえるので安心です。
LINE相談やオンライン面談などに対応していること
LINE相談やオンライン面談できる弁護士の場合、労災事故で入院している方や、法律事務所が遠い方でも相談できます。
委任契約を結ぶときは法律事務所に出向かなければなりませんが、ひとまずLINEやオンラインで相談しておくと、当面の対処法などをアドバイスしてもらえます。
オンライン面談はお互いの顔が見えるので、弁護士との相性もチェックできるでしょう。
弁護士とのやりとりを残しておきたいときは、LINE相談を活用してください。
相談者の意向を尊重してくれること
労働問題を弁護士に相談するときは、自分の意向を尊重してくれるかどうかチェックしてください。
弁護士によっては相談者の意向を聞き入れず、勝手に解決方針を決めてしまう場合があります。
パワハラ上司との和解を望んでいるにも関わらず、慰謝料請求だけに焦点を当てている弁護士であれば、委任契約は結ばないほうがよいでしょう。
ただし、経験豊富な弁護士はさまざまノウハウを持っており、自分の考え方とは異なる方針でも、長期的にみるとベストな解決策になる場合があります。
弁護士の提案に抵抗感があるときは、必ず理由を聞いてください。
弁護士費用が明確であること
弁護士費用が明確であれば、予算を組みやすくなり、支払いトラブルも起きません。
労働問題の解決には着手金や報酬金がかかり、自宅や会社に出向いてもらったときは日当や交通費も発生します。
ほとんどの弁護士は料金表などを提示してくれるので、大まかな弁護士費用を把握できるでしょう。
ただし、悪質な弁護士は報酬体系などの説明がなく、想定外の費用を請求される恐れがあるので要注意です。
弁護士に労働問題を相談するときは、追加費用の算定基準なども確認してください。
労働問題を弁護士に無料相談する際の注意点
労働問題を弁護士に無料相談するときは、以下の点に注意してください。
弁護士は「金銭支払いによる解決」を基本としているので、相談内容によっては別の相談窓口が適しているでしょう。
無料相談で全ての労働問題が解決するわけではない
弁護士の無料相談を利用しても、すべての労働問題が解決するわけではありません。
労働問題によっては訴訟に発展し、数年にわたって争うケースもありますが、結論を下すのは裁判官です。
法律論争は長期化しやすいので、「決着するまで待てるかどうか」という問題が出てくるでしょう。
弁護士の無料相談には時間や回数の制限がある
弁護士の無料相談は基本的に初回のみとなっており、相談時間は30分や1時間程度です。
トラブルの原因が複雑なケースや、関係者が多い労働問題の場合、1回の相談では説明し切れないため、2回目以降の相談料がかかるでしょう。
弁護士以外の相談先が適切な場合もある
弁護士は以下の労働問題に対応してくれますが、状況によっては別の相談窓口を利用したほうがよい場合もあります。
- 給与や残業代、退職金の不払い
- 不当解雇や退職勧奨
- 雇い止め
- 長時間労働
- 内定取消し
- 労働災害
- パワハラやセクハラ
「悩みを共有し、理解してくれる人がほしい」といった要望であれば、必ずしも弁護士が適切な相談窓口とはいえないので、以下の窓口への相談を検討しましょう。
弁護士以外に労働問題を無料相談できる窓口6選
労働問題に困ったときは、国の受託事業や行政機関の相談窓口も利用してみましょう。
以下の窓口はすべて無料相談になっており、夜間相談や24時間相談も可能です。
こころの耳
職場の人間関係に悩みがあるときは、「こころの耳」に相談してみましょう。
こころの耳の相談方法は以下のようになっており、電話相談は1回につき20分に制限されています。
電話番号 | 0120-565-455 |
利用時間 | 月・火曜日:17時00分~22時00分 土・日曜日:10時00分~16時00分 ※祝日と年末年始を除く |
電話以外の相談方法 | SNS相談やメール相談 |
長時間労働でメンタルを病んでしまった方など、気持ちが塞がっているときはこころの耳に相談してみましょう。
労働条件相談ほっとライン
労働条件相談ほっとラインは労働相談全般を受け付けており、専門知識のある相談員が対応してくれます。
土日・祝日:9時00分~21時00分
※12月29日~1月3日を除く土日・祝日:9時00分~21時00分※12月29日~1月3日を除く
電話番号 | 0120-811-610 |
利用時間 | 月~金:17時00分~22時00分 |
電話以外の相談方法 | なし |
労働条件相談ほっとラインは利用者が多いので、電話がつながりにくいときは時間帯を変えてみましょう。
相談員が対処できない労働問題であれば、専門的な相談窓口を案内してもらえます。
総合労働相談コーナー
総合労働相談コーナーは全国の労働局などに設置されており、電話や面談で労働問題の相談を受け付けています。
電話番号 | 各都道府県の公式ホームページ参照 |
利用時間 | 月~金:17時00分~22時00分 土日・祝日:9時00分~21時00分 ※12月29日~1月3日を除く |
電話以外の相談方法 | 直接面談 |
労働契約違反などがある場合、指導や是正、あっせんによる解決方法も選べます。
ただし、あっせんなどの解決方法には強制力がないため、労働問題が収束しないときは、労働審判の申し立てや訴訟の提起も必要でしょう。
ハラスメント悩み相談室
カスタマーハラスメントや就活ハラスメントに困ったときは、ハラスメント悩み相談室に相談してみましょう。
相談方法はメールとSNSのみですが、時間受付けになっており、遅くとも72時間以内には返信があります。
カスタマーハラスメントや、就活ハラスメントは相談相手がいないケースが多いので、ストレスを溜め込む前に相談してください。
みんなの人権110番
ハラスメントによる人権侵害がある場合、みんなの人権110番が相談に乗ってくれます。
電話番号 | 0570-003-110 |
利用時間 | 平日の8時30分~17時15分 |
電話以外の相談方法 | 直接面談とインターネット相談 |
労働相談には法務局職員や人権擁護委員が対応しているので、適切なアドバイスを受けられます。
悪質性の高い人権侵害であれば、通告や刑事告訴などを措置してくれるため、職場のハラスメントを撲滅できる可能性があるでしょう。
なんでも労働相談ホットライン
なんでも労働相談ホットラインは日本労働組合連合会が運営しており、非組合員の労働相談にも対応しています。
電話番号 | 0120-154-052 |
利用時間 | 平日の10時00分~17時00分 |
電話以外の相談方法 | AIチャットやLINE、直接面談やメール |
AIチャットは常時稼働しているので、休日や夜間、年末年始も利用できます。
面談で労働問題を相談したいときは、「地方連合会」に連絡してみましょう。
さいごに|労働問題に困ったときは弁護士の無料相談を活用しましょう
労働問題が発生すると、働く人の権利が侵害されてしまい、生活が脅かされるケースもあります。
労働者の権利は法律によって保障されていますが、会社や上司を相手取って争うと、不当人事などで報復される可能性もあるでしょう。
パワハラやセクハラなどの問題であれば、被害者側がハラスメントを立証しなければなりません。
労働問題の解決は難易度が高いので、困ったときは弁護士や行政機関の無料相談を活用してください。