うつ病で退職する際の注意点と支援制度を紹介。各種手続きもチェック

このように、うつ病によって仕事を続けるのが困難な状況に陥っている方も多いでしょう。

仕事量や職場の環境によっては、さまざまな原因でうつ病を発症したり、うつ病症状が悪化したりするケースも少なくありません。

本記事では、うつ病で退職する前に準備すべきことや、うつ病で退職する際の基本的な流れを詳しく解説します。

記事の後半には、うつ病の方が退職後に利用を検討すべき支援制度や施設も紹介するため、退職できずに悩んでいる方は参考にしてください。

うつ病で退職する前に検討したいこと

うつ病とは気分障害の一つで、心の病や脳の病気ともいわれています。

現代人100人のうち、3〜7人の割合でうつ病を経験した人がいるという調査結果があるほど、生活習慣病に近い病としてとらえられているのです。

発症する原因は正確には解明されていないものの、感情や意欲をつかさどる脳の働きに何かしらの不調が生じていると考えられています。

過度な精神的・身体的ストレスがかかることで発症するケースが少なくありません。

うつ病の状態が続くと仕事を継続するのも難しく、仕事を辞めたいと考える方も多いでしょう。

しかし、うつ状態では正しい判断をしにくいため、退職後に後悔してしまうケースもあります。

ここからは、うつ病を理由に退職を検討している方に向けて、後悔しないためにまずやるべきことを見ていきます。

医師の診断を受ける

うつ病を理由に退職を検討している場合やうつ病の疑いがある場合は、決して自己判断せずに、心療内科や精神科のあるクリニックを受診してください。

うつ症状をチェックしたうえで客観的なアドバイスをくれたり、退職以外の選択肢がないかを一緒に模索してくれたりします。

うつ病には、次のようなサインや症状が見られます。

上記のような症状がある場合は、うつ病を発症している可能性があります。

なるべく早いタイミングで医療機関を受診しましょう。

精神的な不調を理由に、医療機関の受診に抵抗のある方もいるかもしれません。

しかし、うつ病を理由に退職・休職する場合は、医療機関の受診歴や診断書が必要となるケースが多くあります。

また、うつ病と診断されることで、職場の理解を得やすくなるだけでなく、公的な支援を受けやすくなるケースもあります。

医師の診断を受けて、うつ病ではなく違う病気だったという可能性もあるため、医療機関を受診する重要性を理解しておきましょう。

うつ症状のある状態では、冷静になって正しく判断しづらくなります。

退職後に後悔しないためにも、専門医師による診断を受けたうえで、慎重に退職を決断してください。

休職制度などを利用できないか検討する

うつ症状で体調が優れないとしても、手にした職を手放すことに不安や抵抗を感じている方も多いでしょう。

退職せずに仕事を続けたい気持ちが少しでも残っている場合は、休職も視野に入れてください。

職場での労働環境を変えられない場合や、労働条件を変えてもなかなか症状が回復しない場合も同様に、すぐに退職を決断せず、休職制度の利用も検討できます。

たとえ、最終的に退職したい場合でも、精神的に不安定な状態では退職後の生活や転職活動がうまくいかなくなるケースも考えられます。

いったん休職することで、心身ともにリフレッシュした状態で転職活動に踏み切れるはずです。

ただし、休職制度の有無や内容は企業によって異なります。

勤務先の就業規則の記載内容をチェックして、休職制度を利用できるのかどうかや、利用するための条件を確認しましょう。

家族などに相談する

自分がうつ病ではないかと感じたら、信頼できる家族や友人などに話を聞いてもらいましょう。

不安な気持ちを抱えていること、仕事の現状や仕事に対する考えなどを話すことで、ごちゃごちゃしていた頭の中を整理できたり、気持ちが楽になったりするはずです。

うつ病の治療には、家族や周りの方たちの理解がとても大切です。

退職後の事後報告では、家族や周囲の人たちを混乱させてしまう恐れがあるため、退職を考えている場合は、退職を検討している旨を事前に伝えておきましょう。

うつ病の症状を緩和させるためにも、決して一人だけで抱え込まないこと、そして必要以上に自身を追い詰めないことが重要です。

うつ病で退職する際の流れ

うつ病を発症して仕事の継続が難しくなった場合、どのように行動すればいいのでしょうか。

ここでは、うつ病を理由に退職する場合の一般的な流れを詳しく解説します。

診断書を受け取る

うつ病を理由に退職する場合は、会社によっては医師の診断書の提出が求められる場合があります。

勤務先の就業規則を確認し、診断書の提出が必要かをチェックしてください。

診断書の提出が必須ではない会社であっても、診断書を提示することで、スムーズに退職手続きが進む可能性もあります。

また、契約社員や派遣社員のように雇用期間の定めがある有期雇用契約を締結している場合でも、医療機関の診断書を提示すれば、会社の合意を得やすくなるでしょう。

診断書は、退職だけでなく、休職する際にも必要な場合があります。

また、傷病手当金や失業保険などを受け取る際も医師の診断書が必要です。

診断書の作成にかかる期間は、受診する医療機関によって異なるものの、1週間から2週間程度かかるケースが多いため、スケジュールに余裕を持って依頼してください。

また、作成にかかる費用も医療機関によって大きく異なります。

3,000円前後で依頼できるケースもあれば、5,000円以上かかるケースもあるため、あらかじめ医療機関に確認しておくのが安心です。

退職の意志を伝える

診断書を受け取り、家族にも話をしたうえで、退職したい旨を直属の上司に伝えます。

就業規則に退職を申し出る具体的な期日が記載されている場合は、そのルールに従いましょう。

特別な記載がない場合は、民法の規定に準じてください。

正社員のように雇用期間の定めがない無期雇用契約の場合は、退職日の2週間前までに申し出れば問題ありません。

契約社員のような有期雇用契約を結んでいる場合は、原則として契約期間終了後でなければ退職できませんが、以下の条件に該当する場合は即日退職が認められる場合があります。

上司への退職の伝え方としては、直接会って口頭で伝えるのが望ましいです。

どうしても直接伝えられない場合は、郵送やメールを利用してください。

うつ病を理由に退職したいと言いたくなければ、一身上の都合として伝えてもいいでしょう。

退職手続きが完了したら、退職先から必要書類が自宅に送付されます。

退職時に受け取る書類は、以下のとおりです。

雇用保険被保険者離職票は、失業保険を給付申請する際に必要な書類です。

退職先から郵送された書類を確認し、離職票が同封されていない場合は発行してもらうよう依頼しましょう。

各種保険の切り替え手続きをおこなう

退職する場合は、厚生年金から国民年金へ、そして健康保険から国民健康保険への切り替えが必要です。

どちらの手続きも、居住地の市区町村役場で手続きできます。

健康保険

在職中に加入していた健康保険を、以下の3つのどれかに変更しなければなりません。

任意継続で保険に加入すると、それまで会社と折半で加入していた保険料が全額負担となるものの、それでも国民健康保険よりも安く抑えられるケースがあります。

現在加入している社会保険を任意継続する場合、退職から20日以内に申請する必要があります。

なるべく早いタイミングで退職先に申し出てください。

雇用保険（失業保険または傷病手当）

退職後、再就職する意思はあるものの就職先が見つからない場合、雇用保険の失業手当の申請が可能です。

居住地にあるハローワークで申請手続きをしましょう。

「うつ病になってすぐには仕事に就けないが働きたい」という意思がある場合は、その旨を申請することで受給期間が延長されるケースもあります。

雇用保険の手続きをする際は、退職先から発行される離職票が必要です。

退職前に発行してもらうよう依頼してください。

年金

定年後に支給される年金には、厚生年金と国民年金があります。

退職後は、厚生年金から国民年金への切り替えが必要です。

退職後に居住する市区町村の役場で手続きをしましょう。

退職後に役立つ支援制度

うつ病を発症している時に利用できる支援制度を詳しく説明します。

社会復帰に向けて利用できる支援制度のため、退職後の経済状況に不安を感じている方はぜひ参考にしてください。

自立支援医療

自立支援医療とは、障害の治療にかかる費用の自己負担額を軽減する制度です。

公費で医療費の一部を負担し、医療費の自己負担を抑えられます。

自立支援医療には次の3種類があり、それぞれで対象となる方が異なります。

種類	対象	条件
精神通院医療	うつ病や注意欠如・多動症（ADHD）などの発達障害を含む精神疾患を持つ方	継続的な通院や治療が必要な場合
更生医療	手術や治療によって、身体障害の症状の軽減が見込まれる方	・18歳以上 ・身体障害者手帳が交付されている方
育成医療	手術や治療によって身体障害の症状軽減が見込まれる児童	・18歳未満 ・身体障害者手帳が交付されている方

うつ病で継続的な通院や治療が必要な方は、精神通院医療の対象となります。

自立支援医療を利用するためには、居住地の市区町村への申請が必要です。

条件を満たすと医療費負担を通常の3割から1割負担に軽減でき、療養中の経済的負担を軽くして治療に専念できるようになるでしょう。

生活福祉資金貸付制度

生活福祉資金貸付制度とは、低所得者や高齢者、障害者を対象に、都道府県の社会福祉協議会が資金の貸付や相談・支援をおこなう制度です。

貸付の対象者は、次のとおりです。

生活福祉資金貸付制度では、失業や減収を理由に生活が困窮している方に対して、生活費や一時的な資金を貸付する総合支援資金が設けられています。

総合支援資金を利用する方に対して、生活困窮者自立支援制度による支援を同時におこなうことで、生活の立て直しをサポートしています。

生活保護

生活保護とは、売却できる資産や生活できる預貯金がないなどを理由に生活に困窮する方に対し、国が経済的な支援をおこなう制度です。

生活保護は「最後のセーフティーネット」とも称されているため、制度を利用するのにちゅうちょする方も多いかもしれません。

しかし生活保護は、健康で文化的な最低限度の生活を保障する制度です。

生活保護を受給することで生活が安定し、次のステップに進む準備ができるでしょう。

窓口に相談後、調査を実施し、保護が必要と判断された場合に生活保護を受給できます。

生活が苦しいと感じている方は、居住地の市区町村の生活保護課に相談してみてください。

再就職を検討する際に利用したい施設・制度

うつ病を理由に退職した方が再就職する場合、仕事を継続できるか、就職してもまた退職してしまうのではないかと不安に感じている方もいるでしょう。

ここでは、再就職を検討する際におすすめの施設や制度を詳しく説明します。

ハローワーク

ハローワークとは、厚生労働省が全国500ヵ所以上に設置する公共職業安定所です。

求職者や事業主に対して、さまざまなサービスを無償で提供しています。

ハローワークには、うつ病のような精神疾患のある方が相談できる専用窓口が存在します。

うつ病の専門知識のあるスタッフが、相談者に適する求人募集を紹介してくれたり、応募書類の作成や面接対策を一緒におこなってくれたりするため、専門的な支援を受けられるのが大きな特徴です。

場合によっては、実際に就職する前にインターンを打診してもらえることもあります。

障がい者手帳がない方でも利用できますが、障がい者対象の求人紹介を希望する場合には障がい者手帳が必要です。

障害者就業・生活支援センター

障害者就業・生活支援センターは、別名「障害者就労支援センター」とも呼ばれ、厚生労働省が設置する障害のある方をサポート・支援する公的機関です。

就業支援担当と生活支援担当の専任のスタッフが在籍しており、全国に337ヵ所（2023年4月時点）設置されています。

ハローワークが就労に特化して支援するのに対し、障害者就業・生活支援センターでは、就労と生活の両面から障害者の方をサポートするのが大きな特徴です。

就労前の支援はもちろん、就労後も働き続けられるように手厚くサポートします。

また、就労支援だけでなく、日常生活全般に対する支援もおこないます。

障害のある方の生活基盤を整備して、安心して就労できる環境を整えてくれるのです。

これから退職を検討している方はもちろん、すでに退職していてこれから再就職を検討している方でも利用できます。

就労移行支援

就労移行支援とは、障害者総合支援法に基づいて就労支援をおこなうサービスです。

一般企業への就職を目指す障害のある方や病気療養中の方に対し、就労に向けた支援・サポートを提供しています。

事業所に通いながら生活リズムを整えたり、就業に必要なスキルや知識を習得するためのプログラムに参加したりして、再就職を目指します。

企業インターンへの参加や就職後の定着支援も実施しているため、再就職に不安を抱えている方も利用しやすい支援サービスといえるでしょう。

退職を伝えるときトラブルになったら

うつ病を発症している方が退職を伝える際に想定されるトラブルとして、執拗（しつよう）な引き止めがあります。

良心に訴えかけて在籍するよう促されたり、場合によっては損害賠償の請求や違約金の支払いを要求されたりするケースもあるかもしれません。

また、職場のいじめやパワハラが原因でうつ病を発症したにもかかわらず、どのように訴えればよいかわからず泣き寝入りするケースも考えられます。

うつ病を発症している方がスムーズに退職するためには、退職代行の利用がおすすめです。

退職代行Jobsは、顧問弁護士によって適正な指導を受けており、労働組合と提携して代行サービスを提供しています。

労働組合に加入して代行サービスを依頼すれば、退職日の調整や有給休暇の取得、未払い賃金の支払いなどの交渉ごとにも対応可能です。

退職の意思が伝えられず悩んでいる方は、無料相談を利用して気軽に問い合わせてみましょう。

うつ病での退職に関するよくあるQ＆A

うつ病の方が退職する際によく寄せられる質問をまとめて紹介します。

うつ病で退職したいのですが、辞め方は？

うつ病の方が退職する際の基本的な流れは、次のとおりです。

退職する際に診断書の提出は必須ではないものの、提出することで退職手続きをスムーズに進められるでしょう。

会社に退職の意思を伝えられずに悩んでいる方は、決して無理をせずに、退職代行サービスの利用を検討してください。

うつ状態で退職したら失業手当はもらえますか？

結論からいうと、うつ病を理由に退職した場合でも失業手当を受け取れます。

ただし、失業手当を受給できる条件は次のとおりです。

うつ病を理由に退職をし、失業手当を受給する方の場合、1つ目の条件に注意が必要です。

うつ病の症状が回復していない状態では、失業保険を受給できない場合があると覚えておきましょう。

うつ病で欠勤したらクビになりますか？

うつ病にかかって業務を遂行できない場合、企業は該当する従業員をいきなり解雇することはありません。

まずは休職させ、治療に専念するよう促すのが一般的な流れです。

ただし、就業規則に定めた休職期間を経過しても、症状の改善が見られない場合や仕事に復帰できない場合は、解雇できます。

ただし、以下のケースに該当する場合は、原則解雇できません。

上記の条件に該当する方が解雇された場合は、不当解雇となります。

不当解雇に該当する場合は、弁護士に相談して必要な対応をとっていきましょう。

さいごに｜休養を最優先に！

うつ病が原因で仕事を辞めたいと感じたら、まずはなるべくストレスを少なくし、休養を最優先すべきです。

いきなり退職することに不安を感じる場合は、休職制度の利用を検討してください。

うつ病で休職や退職した場合でも、失業保険や傷病手当金などを受給できたり、再就職に向けた支援制度を利用できたりします。

決して焦らず、時間をかけて病気と向き合っていきましょう。

うつ病を理由に退職を検討している方は、豊富な実績を誇る信頼性の高い退職代行の利用がおすすめです。

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