会社が「損害賠償を請求する」と言っている… 〜不当な脅しに負けないで!

会社が「損害賠償を請求する」と言っている… 〜不当な脅しに負けないで!

会社が「損害賠償を請求する」と言っている… 〜不当な脅しに負けないで!

会社からの損害賠償請求

会社を辞めたくても辞められない…悩んだ末に、退職代行に頼んで、退職の連絡を代行してもらう。

そんなサービスが増えることに疑問をお持ちの方もいるかもしれません。

確かに、会社を辞めたいなら、自分で退職しますと伝えればよいと思うかもしれませんが、

実際には、弱い立場の労働者に脅しをかけたり、高圧的な態度で退職を阻止してくる会社も珍しくないのです。

ひどい場合には、「辞めたら損害賠償を請求します。」という通知を送りつけてきたり、「私は2年間は会社を辞めません。」という不当な念書を書かせたりして、

「もし辞めたら、賠償請求されるんだ…」という恐怖をうえつけて、退職出来ないようにしている会社まであるのです。

会社からそのような通知を受けると、やはり不安になり退職できずに悩んでいる方も多くいらっしゃいますが、結論として、これらは大抵不当な脅しでしかありません

こんなことをしてくるような会社からは、辞めたいと思うのは当然ですし、そうすべきでしょう。人よりお金なんでしょう。

このような非道なやり方に屈することなく、辞めたい仕事はきっぱり辞めて、新しい仕事で自分を活かしていくチャンスへと身を乗り出していくために、知識と勇気を備えましょう。

今回は、通常会社は退職を理由に損害賠償できないことを理解し、不当な脅しに負けて、大切な人生の時間をそのような会社で過ごすことのないよう、情報をまとめてみます。

法的根拠

損害賠償請求の法的根拠としては、大きく分けて二つあります。

一つは、不法行為(民法709条)で、契約関係にかかわらず、わざともしくは不注意で、他人の物を壊したとか、人を怪我させた、という場合に、相手の被った損害を賠償するものです。

会社で業務と関係ないことで、例えば会社のお金や物品を盗んだりした場合、会社側は損害賠償できることになりえます。これは普通の話で、退職に関するものではないので、ここでは省略します。

もう一つは、債務不履行(民法415,416条)による損害賠償で、契約を締結した者が、契約を破ったり、不注意で適正に約束を果たさなかった時に請求できるものです。

例えば、会社に勤めると、雇用契約を締結して、労働者には労働する債務、使用者には賃金を支払う債務(約束)が発生します。

無断欠勤が続くと、約束通りの労働を提供していないことになり得ます。なので、いわゆるばっくれはオススメできません

退職の自由

契約が続いたままの無断欠勤は労働契約違反ですが、退職の意思表示をして労働契約を解約してしまえば、特に問題ありません

民法や労働法では、労働者に「退職の自由」を認めています。

どういうことかというと、労働者が「辞めます」と伝えた時に、会社側が「それは認められない」ということはできない、無理やり働かせ続けることは許されない、ということです。

なので、労働者が「辞めます」という意思表示をした場合には、契約形態によりますが、即時もしくは一定期間経過後に、使用者が何を言おうと労働契約は解約されることになっています。

この点、通常は社則や雇用契約で、退職の通知は1ヶ月前までに申し出ることとされていることが多いです。なので、契約に従って予告期間通りに退職届を出して辞めるのが原則です。

しかしながら、「退職の自由」は、奴隷的拘束を定めた日本国憲法18条や職業選択の自由を定めた日本国憲法22条から導かれる重要な人権で、

労働法においては、使用者に比べ立場の弱い労働者が守られるべきことから、

社則や労働契約よりも、特段の事情がない限り、期間の短い法律の規定が優先するとされるのが通常です。

ですので、労働者が法律の定めに従って退職したことに対して、会社はたとえ業務に支障が出て不利益を被っていても責任を追求することはできないのです。

そもそも、社員が辞めたくならないような職場環境にすることや、急に一人が抜けても通常業務に支障が及ばないような体制にしておく責任は、会社にあるのです。

法律の定め

では、それに従って退職すれば会社から損害賠償請求されることはない法律の規定とはどのようなものでしょうか。知っておきましょう。

労働者が「退職します」と言ったら相手の了承なしに、労働契約は解約できるというのは、どの契約形態でも同じです。

違うのは、退職しますと意思表示してから退職に至るまでの期間です。これは、期間を定めた労働契約か期間を定めていない労働契約か、欠勤が給料に影響しない完全月給制や年俸制か、親の介護や自分の病気など「やむを得ない事情」があるか、によって変わります。

①期間の定めのない契約

民法627条 1項
当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申し入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申し入れの日から2週間を経過することによって終了する。

通常の正社員・パート・アルバイトは、多くがこの「期間を定めていない」雇用契約であると思います。その場合は、2週間前に「解約の申し入れ」つまり退職の意思を示せばよいのです。

原則は社則に定められた書式に従うべきですが、法律上は意思表示は文書である必要はなく、口頭でも有効なので、上司に伝えるだけでもこれにあたります。

しかしながら、争いが生じた場合には、言った聞いてない、の話になることがあるので、問題となりそうな場合は、証拠として残るメールやLINEなどでも触れておくのが望ましいでしょう。

②年俸制・月俸制

民法627条2項
期間によって報酬を定めた場合には、解約の申し入れは、時期以後についてすることが出来る。ただし、その解約の申し入れは、当期の前半にしなければならない。
民法627条3項
6箇月以上の期間によって報酬を定めた場合には、前項の解約の申し入れは、3箇月前にしなければならない。

特殊な業種や管理職以外にはあまり多くないと思いますが、年俸制や月給制の方は、解約までの期間が長くなっております。

通常の1ヶ月いくらという給与でも、欠勤や勤務時間が管理されているような場合は、日給月給制と言って、純然たる月俸制とは区別されて①にあたります。

③期間の定めのある契約

民法628条
当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。
労働基準法137条
期間の定めのある労働契約(一定の事業の完了に必要な期間を定めるものを除き、その期間が1年を超えるものに限る。)を締結した労働者(第14条第1項各号に規定する労働者を除く。)は、労働基準法の一部を改正する法律(平成15年法律第104号)附則第3条に規定する措置が講じられるまでの間、民法第628条の規定にかかわらず、当該労働契約の期間の初日から1年を経過した日以後においては、その使用者に申し出ることにより、いつでも退職することができる。

期間限定アルバイトなど、6ヶ月間とか○月○日まで、というように期間を定めた雇用契約の場合は、1年を超えていれば、いつでも問題なく辞められることになっています。

しかし、1年未満の場合、その期間は辞めないのが原則となり、辞めるには「やむを得ない事情」が必要となります。

「やむを得ない事情」とは、親の介護・本人の病気やけが・給料の未払い・セクハラなど比較的広く解釈される傾向にあります。

ここに、「やむを得ない事由にその事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う」とありますが、犯罪だとか飲酒運転による事故のような過失で働けなくなってしまった場合のように、本人に問題があったような場合で、一般的な病気などはこれにあたりません。

損害の発生

このように法律の定めに従った退職は、例え会社に不利益が生じていても、損害賠償はできないのが通常です。

しかし、この期間を守らないで退職してしまった場合はどうなのでしょうか。

結論からすると、その場合でも会社に実損害が発生した場合で、その実損害とその社員の退職の因果関係を証明できないと、損害賠償がそうやすやすと認められるわけではありません

損害賠償が認められた判例も、かなり特殊な事例だけです。

その社員が辞めたから損害が発生するとは、実際にはそんなに考えられないのです。

例え他の人を雇うことになったとしても、会社は辞めた社員への給与支払いがなくなり、新しく雇った社員の給料を払うだけですから、損害とは言えません。

新しく雇った社員に研修費がかかっても、新入社員の研修費は会社として通常支払うものですから、これも実際には損害とは言い難いのです。

そう考えると、特殊なプロジェクトで、他に容易には替えがきかないような専門的技能を有する方が辞めて、そのプロジェクトが打ち切られる、そしてそうなることは誰の目から見ても明らかであるような事案などに限定されるのではないでしょうか。

給料との相殺の禁止

会社に生じた損害を差し引くという不当な主張や通知をしている会社もあるようです。

しかし、労働基準法24条1項は、「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。」と定めています。

これを、賃金の全額払の原則と言い、最高裁判所も会社の損害賠償と労働者の賃金との相殺は認められないと判示しています。

なので、もし会社がそのような給料からの差し引きを主張したとしても、それは認められない不当な主張であることは明らかです。

このような脅しには決して屈せず、損害賠償される理由はないと伝えましょう。

こんな主張をしてくる会社からは、早く縁を切るのが、本当にオススメです。適正適法に誠意に業務を行なっている会社は他にいくらでもあるのですから。

対応の仕方

対応の仕方としては、「私は法律の規定に従って辞めているので、損害賠償をお支払いする義務はございません。」と丁重に回答しておいて、あとは放置しておいて良いでしょう。

しつこい場合や、法律の規定に沿わずに辞めた場合で、会社側に実損害が生じている場合には、お近くの弁護士・厚生労働省の総合労働相談コーナー・労働基準監督署などに相談する手もあります。

立場の弱い労働者には強く出てきている会社も、知識や調査権限をもった第三者機関が入ってくれば、根拠のない主張を続けることはないでしょう。

脅しには決して屈しないで下さい。

脅すなどという会社がなくなってくれることを望みますが、自分の身は自分で守ることも大切です。

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