パワハラで会社を辞めたい! ~退職へ向けて① パワハラの実態を知ろう~

パワハラで会社を辞めたい! ~退職へ向けて① パワハラの実態を知ろう~

パワハラで会社を辞めたい! ~退職へ向けて① パワハラの実態を知ろう~

「パワハラ」

もう多くの人が聞き馴染みのある言葉なのではないでしょうか。
後に詳しく定義を説明しますが、要は、「職場での立場を利用した人への嫌がらせ」です。

簡単に言えば、ただの“イジメ”なのですが、子供達の中でも問題になっているように、イジメられた方からすれば、自殺も考えてしまうほど深刻になりうる大問題です。

いい大人になった人達が、このような行為を行う社会は恥ずべきものですが、実際問題、日本ではパワハラは増え続けているのです…



退職代行業が必要とされるようになった背景にも、このパワハラの横行問題が大きく関係していると思います。

パワハラとは何か、パワハラにはどのように対処できるのか、被害に遭った時に補償は受けられるのか、などについて知識を高め、声を上げ、パワハラの横行を防いで、皆んなが生き良い社会を目指していきましょう!



パワハラに関わる話は多いので、シリーズ連載とし、今回はまず、パワハラの問題点と具体的にどういう場合がパワハラにあたるのか、というパワハラの実態を把握する基本編から説明していきます。

パワハラが増加する日本

平成28年の厚生労働省の調査によると、パワハラを受けたと感じた経験がある人は調査を受けた労働者の中の32.5%に及んでおり、平成24年の調査時の25.3%と比較すると明らかな増加が見られます。

(https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000163573.html)

どういう基準で調査しているかまではわかりませんが、厚生労働省が行っているので、それなりに公正に行われているのでしょう。それにしても3人に1人とは!!

そうなんです。心が病んだ方が増えている日本では、思った以上にパワハラが蔓延しているのです…

ここで言いたいことは、実はパワハラを受けていて、心身の調子が優れず、能力も低下しているにもかかわらず、それを自覚していないために、自分がダメなんだと自分を責めている人が多いという事実です!

日本人は謙虚すぎるほど謙虚なことが特徴で、すぐに自分のせいにしてしまう傾向があるので、ここは本当に要注意です。

また、パワハラの性質上、職場での立場の弱さゆえ、言い出せない人も多く、一日の大半を過ごす職場での嫌がらせで一気に精神状態が悪くなり、ひとりで悩みを抱え込んでしまうことになりやすいこともあるでしょう。

この点、悩みを相談すること自体を、悪い、申し訳ない、恥ずかしい、と思ってしまう方が多いのも背景にあります。これには情報不足も関係します。

そこでこの記事では、パワハラとは何なのか、をしっかり理解し、それは普通ではない、行ってはいけない行為だ、ということをまず自覚していくことから始めていきたいと思います。

知識をつけ、相談できるところがあると知り、パワハラをのさばらせておくような社会は、皆んなで変えていきましょう!




なぜパワハラが増えるのか

まずは、ストレスがあげられるでしょう。ストレスの蔓延は社会問題と言ってもいい状況ですが、基本的には個人の問題です。怒っている人の個人的な問題なんです。怒っている人は皆怒っている自分に問題がある。



それを、自分がちょっと上の立場にいることをいいことに、部下にあたり散らして、ストレス発散をしているだけなのです。

充実して幸せな日々を送っている人が、部下を指導するのに、怒鳴り散らしたり、嫌味な言い方をすると思いますか?普通に話して説明できますよね。それが正常な大人です。

単に、自分の感情を扱えない人の八つ当たりに甘んじて、自分の心身や能力を損なっている場合ではありません。きっちり対応していけるようになりましょう。

もう一つは、企業体質というものでしょうか。まだまだ日本にはトップダウンなヒエラルキー的な組織構造や上下関係の風土が強い会社が多いように思われます。

本当は、上下関係よりも横の関係として人と人が繋がる方が、多種の意見が反映されやすく、年齢や役職にとらわれない個人を尊重した経営により、結果能力の高い人財が育まれ、組織の生産性は向上して優良企業となっていくのですが…

次回からの対策編で述べていきますが、そこを理解した上で、会社の体質改善に乗り出していくのも一つ。そんな会社とは手を切って、もっと人を尊重することを大切にしている会社に乗り換えるのも一つ。

知っていただきたいのは、やはり、それが当たり前なのではない。そうじゃない上司も会社もある。怒っている人の感情の問題を自分が受けとる必要はない、ということです。

自分の意見が言える健全な環境に身をおいて仕事すれば、みな本来の能力を発揮して、充実して仕事をすることができると思います。パワハラに屈しないで脱していきましょう!

パワハラの問題点


⑴ 本人への問題

経験したことがある人は良くわかると思いますが、嫌がらせを受け続けていると、人は精神的な問題ひいては身体的な問題にまで発展してくることがあります。

具体的には、うつ・PTSD(心的外傷後ストレス障害)・睡眠障害・パニック障害など程度の差はあれ、精神的に病んだ状態へと追い込まれていくことになりかねません。

これら精神的な問題は、ホルモン分泌に多大な影響を及ぼし、自律神経の調節機能や、記憶力・創造力など個人の能力をむしばんでいくことにもなりうるのです。ストレスホルモンの影響については、Jobs顧問弁護士のコラム、今ある「仕事」という言葉へのイメージを変えて、もっと仕事を楽しくする①にも詳しく説明されているので、一度お読みいただくとその重大さがわかると思います。

うつは心の風邪、などと言われていた頃もありましたが、慢性的なパワハラ状況下では、通常は放っておいても治る風邪と同じに考えるには無理があります。自分を大切にして、活き活きとした人生を取り戻すためにも、知識を得て改善のための行動にでていきましょう!




⑵ 周りの人の問題点

パワハラは、嫌がらせをしている人とされている人達だけでなく、周りで見ている人にも勿論影響を及ぼします。

次は自分にもくるのではないか…とハラハラしたり、常にビクビクとした状態で仕事をするハメにもなりかねません。こんなこと言ったら、自分も標的にされるのではないかと、正当な意見も言えない環境にもなってしまうでしょう。

そうすれば、当然会社の生産性は下がります。そうして社内の業績が上がらないから、また上司は不満や不安を募らせ、さらに機嫌を悪くする… 悪循環です。

今自分が標的にされているわけではないけれど、同じ職場の人がパワハラに遭っているのを目撃している人は、実は他人ごとではありません。

当人よりもまだ余裕がある状態かもしれませんので、なせる手立てがあることを当人に教えてあげたり、皆で職場の環境改善に挑んで欲しいものです。

ちなみに、パワハラ行為を認識していながら何もせず傍観していた上司が、責任に問われた裁判例もあります。

⑶ 会社の問題

パワハラが横行している会社が良い会社といえるわけがありません。

たとえパワハラをしているのが一人の上司の個人的な行為であったとしても、会社には「使用者責任(民法715条)」がありますので、従業員が業務上行なった違法行為について責任を負います。

そのほか、会社には、「安全配慮義務(労働契約法5条)」「「職場環境配慮義務(労働安全衛生法71条の2)」「健康の保持増進措置の努力義務(労働安全衛生法69条1項)」等があり、社員が健康で安全な環境で働けるよう配慮する義務があるのです(民法415条)。

以前に比べ、社会的にもパワハラが認知されており、対策が講じられ、行政からの指導や是正勧告も行われます。

インターネットの普及により、ブラック企業の情報は拡散されます。

パワハラへの対応をしてくれる行政のサービス等については、このシリーズの2作目で詳しく説明していきます。

今は、これまで大企業=優良企業とされてきた時代は変わりつつあり、一流企業と言われてきた有名企業がブラック化してきているという事実もあります。

時代が高スピードで移り変わっている今、そのような会社は遅かれ早かれ、廃れていくのではないかと思いますし、そうなるべきです。

逆に、社員を大切にし、社員にどんどんチャンスを与える会社や副業を認める会社も増えてきており、人気を集めていますよね。

まだまだ人生はこれからです。本当にその会社が良い会社なのか、自分でしっかり見つめて、自分の大切な人生を使って共に仕事していきたい会社なのかどうかを見極めて、行動に移していきましょう!

ここでも大事なのは、そんなパワハラが蔓延しているような会社が当たり前なのではない、とまずはしっかり認識することです。




⑷ 加害者の問題

先にも述べたように、怒ったり嫌がらせをしている人は、自分の人生が上手くいっていなかったり、自分の感情がうまく扱えないという問題を抱えている人です。

場合によっては、自分も若い頃、同じような仕打ちにあっていたので、部下に接するのはそういう言い方や態度が当たり前だと思って、パワハラを自覚していない人もいると言います…

パワハラの程度にもよりますが、民事上の責任のほか、著しく社会的相当性を欠いた行為は、刑法上の罪にあたることさえあるのです。事実認定は具体的に判断されなければなりませんが、以下のような犯罪が成立する可能性があります。

  • −殴るような行為は、暴行罪(刑法208条)
  • −被害者が怪我をした場合やうつ病に疾患した場合には、傷害罪(刑法204条)
  • −実際に殴っていなくても、「言う通りにしないと殴るぞ!」という脅し行為は、脅迫罪(刑法222条)
  • −脅した上で、皆の前で土下座させたり、飲めない人に無理に飲酒をさせたりすれば、強要罪(刑法223条
  • −大勢の前で、「お前は仕事が出来ないクズだ!」と罵る行為は、侮辱罪(刑法231条)
  • −大勢の前やインターネットで、「あいつは不倫している女癖の悪いやつだ」などと根も葉もないことを言うような行為は、名誉毀損罪(刑法230条)

本人が自らの心の問題や人生に取り組んでいくべきことは当然ですが、このような犯罪行為にまで発展してしまわないよう、早い段階で、本人にこれはパワハラにあたると思うと告げることや、社内や社外に相談して手を打つなど、皆でパワハラ社会に対処していきましょう。

パワハラで会社を辞めたい! ~退職へ向けて① パワハラの実態を知ろう~

パワハラの定義と具体例

では、具体的に、どのようなケースが「パワハラ(パワーハラスメント)」にあたるのでしょうか?

厚生労働省は「職場のパワーハラスメント」として次のように定義しており、次の⑴から⑶の要件を満たすと、パワハラにあたると考えられています。

同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為
「職場のパワーハラスメント」の定義|厚生労働省HPより

⑴ 「職場内の優位性」とは?

これは、課長と平社員などという「役職上」の優位な関係だけでなく、職場内の先輩・後輩間や同僚間でも、幅広く優位性がありうるということを示しています。
例えば、同期入社のAさんとBさんの場合で、まとめ役の仕事をしているAさんが大勢の前で、個人的な処理の多い仕事をしているBさんに対して、過剰に侮辱的発言や悪口を言ったり、あからさまな無視をしたりすると、同期で役職上は上下関係になくとも、パワハラにあたることがあります。


⑵ 「業務の適正な範囲を超えて」いること

会社側の意見として難しいのが、業務を指導する上やミスを正すための叱責やこれぐらいは行なってもらわないとという適正な業務の範囲内との線引きです。

これは本人の能力や職務内容などと相まって、個別具体的に判断するしかありませんが、下記⑶の①〜③については、業務の遂行に必要な行為ということは出来ず、通常この要件は満たすとされます。

④から⑥においては、線引きが容易ではありませんが、明らかにその時間では出来ない量の仕事量であるか、嫌がらせ的にその人に見合わない仕事をさせているか、などが証拠をもとに判断されることになります。パワハラに遭遇した時の証拠の重要性については、シリーズ2作目を参照ください。

⑶ パワハラの6つの種類

パワハラの定義にある「精神的・身体的苦痛」「職場環境を悪化させる行為」について、厚生労働省は6つの行為類型を挙げています。

職場のパワーハラスメントの6類型 具 体 例
① 身体的な攻撃 殴る・蹴る・丸めたポスターで頭を叩く
② 精神的な攻撃 脅迫・同僚の目の前での叱責・侮辱・ひどい暴言
③ 人間関係からの切り離し 隔離・仲間外し・無視・歓送迎会に呼ばない
④ 過大な要求 業務上明らかに不要なことや遂行不可能な仕事の強制、仕事の妨害
⑤ 過小な要求 業務上合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の
低い仕事を命じることや仕事を与えないこと
⑥ 個の侵害 私的なことに過度に干渉する・家族の悪口
(厚生労働省HPより引用)


① 殴る・蹴るは当然のこと、「書類を投げつける」・「丸めたポスターで叩く」など、一見身体への影響は少なそうに見える行為であっても、パワハラとみなされます。

② 「ばかだ!」「使えない奴」などの暴言や侮辱、同僚の前や長時間にわたる叱責なども⑶の要件の「業務上適正な範囲を超えて」いれば、パワハラにあたります。

③ 「一人だけ資料を配らない」「話しかけても無視をする」「席を隔離する」などのほか、仕事中でなくても、「忘年会などのイベントにわざと呼ばない」などの行為も含まれます。

④ 「誰がやっても就業時間内に終わらないような業務を命じる」「見せしめ的に何度も始末書を書き直させる」「就業規則を手書きで書き写させる」などの行為はパワハラとみなしてよいでしょう。

⑤ 「わざと仕事を与えない(いわゆる窓際族)」「掃除やシュレッダーかけなど雑用ばかりさせる」「専門知識があるのに全然能力に合わない仕事をさせる」などもパワハラにあたります。

⑥ 「休日は何をしているの?」「定時で帰って何をするの?」「彼氏はいるの?」「有休とって何するの?」「愛妻弁当?」「お見合い紹介しようか?」という会話も、本人が触れられたくないのに、しつこく聞いてきたり、冷やかしたりする事もパワハラになることがあります。この場合、もしかした相手は会話を弾ませるために言っているかもしれませんので、パワハラと言えるためには、「そのようなことは話したくない」ということを告げておくことも大切でしょう。

パワハラを把握する

以上、パワハラとは何か?その問題点や原因、そして具体例を説明していきました。

職場でのやり取りで気が滅入ってる人や、その人に会いたくないほど精神的にやられてしまっている人は、自分や仲間が受けている行為がパワハラにあたるのかどうか、よく見てみましょう。

パワハラとまでは言えないとしても、そのような環境下で仕事を続けることは、大切なあなたのためにはなりませんので、早々に対策は考えるべきです。

しかし、パワハラと認められるような時には、証拠集めなどそれなりの準備を整えた上で、会社都合退職をしたり、労災認定を請求したり、できることがあります。

泣き寝入りして、不当なパワハラに屈していることは、よりパワハラを蔓延させるだけです。知識を蓄え、然るべきところに相談し、輝ける未来のために、自分を救い出す行動に移していきましょう!

次回は、パワハラに遭遇した場合の証拠集めや、具体的対策について、お話していきます。