「パワハラが辛すぎて仕事を辞めたい…」
「退職届にパワハラについて記載しても大丈夫?」
パワハラを受けていることを誰にも相談できず、苦しんでいる方も多いのではないでしょうか。
パワハラから逃れたくて仕事を辞めようと思っても、やるべきことがわからずに悩んでしまいますよね。
では、スムーズに辞めるためにはどのような手順を踏めば良いのでしょうか?
- しっかり理解しておきたいパワハラの定義
- パワハラ被害者が辞める前にやるべきこと
- 会社への退職理由の伝え方
この記事では上記のことについて解説していきます。
納得した形で辞められるように、ぜひ最後まで読んでみてください。
この記事の目次
パワハラで辞める前にやるべき5つのこと
パワハラが辛すぎて今すぐ仕事を辞めてしまいたいと思っても、辞める前にやるべきことがあります。
突発的に仕事を辞めれば、不利益を被ることになるからです。
辞める前の準備としてやるべきことは以下のとおりです。
- パワハラの定義を改めて確認する
- パワハラの証拠を集めておく
- 転職活動をする
- 社内の相談窓口や人事に相談する
- 心身の不調がある場合は医師の診断を受ける
今後の選択肢を増やすためにも、ぜひ取り組んでみてください。
それぞれ解説します。
1. パワハラの定義を改めて確認する
まずはパワハラの定義を正しく理解しておくことが大切です。
自分が受けていることがパワハラか否か、きちんと判断する必要があります。
パワハラであれば証拠を集めることで、加害者を訴えたり、会社都合で退職できたりと、選択肢が広がるからです。
泣き寝入りして仕事を辞め、被害者だけが不利益を被ることありません。
謙虚な人ほどパワハラの標的になっていることに対して「自分が仕事ができないからだ」「気合が足りないんだ」と自分のせいにしてしまいます。
しかし、パワハラは被害者の言動ではなく、加害者側の言動で判断されるものです。
厚生労働省は、職場におけるパワーハラスメントについて次のように定義しています。
職場において行われる①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるものであり、①~③までの要素を全てみたすもの。
参考:厚生労働省・職場におけるハラスメントの防止のために(セクシュアルハラスメント/妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント/パワーハラスメント)「職場におけるパワーハラスメントについて」より(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/seisaku06/index.html)
パワハラは上司から部下にだけでなく、場合によっては同僚や後輩からでも成立します。
また「業務の適正な範囲を超えている」場合に成立するということが重要なポイントです。
2. パワハラの証拠を集めておく
パワハラ被害に関してアクションを起こしたときには、証拠が必要です。
今は会社を辞めることで解決できればいいと考えていても、「やっぱり加害者を訴えないと気が済まない」「労災を申請しよう」と考えが変わることもあります。
- 被害の詳細をノートに記録する
- パワハラ発言を録音する
- 画像や写真で残しておく
- 通院記録や診断書を取っておく
上記のように証拠を確保していれば「勘違いだ」「深刻に考えすぎでは?」と誤魔化される心配はありません。
裁判を起こす場合や労災の申請にも役立ちます。
3. 転職活動をする
就労可能な心身状態であれば、転職活動をして職歴に空白期間を作らないようにしましょう。
空白期間があると、再就職に不利になったり、面接の際に事情を詳しく聞かれたりします。
働きながら転職活動するのは大変かもしれません。
- 有給休暇を使う
- 転職エージェントを利用
上記のように、なんとか時間を作る・効率を重視してプロの手を借りるなど工夫してみてください。
転職がうまくいけば、パワハラから逃れることもできます。
4. 社内の相談窓口や人事に相談する
社内の相談窓口や人事など、公平性を担保した相談窓口に相談してみましょう。
パワハラについて、中立の立場で事実確認をしてもらえます。
パワハラが認定されれば、以下のように対応してくれる可能性があります。
- 部署を異動されてもらえる
- 加害者への出勤停止や諭旨退職
今後のことを考えると、パワハラ加害者に「やめてほしい」と訴えかけることは現実的ではありません。
さらに被害が酷くなる可能性すらあります。
信頼できる人や相談窓口を頼って、解決への第一歩を踏み出しましょう。
5. 心身の不調がある場合は医師の診断を受ける
心身の不調がある場合には、きちんと病院にいって診てもらいましょう。
程度によっては、医師より「就業不能」や「就業困難」と診断される可能性があります。
診断書があれば、医師が指示した期間は休職できます。
また、通院記録と合わせてパワハラの証拠のひとつになり得ますので、保管しておきましょう。
パワハラ行為の6つの具体例
パワハラの定義の重要なポイントをお伝えしましたが、抽象的でピンとこない方も多いのではないでしょうか。
パワハラ行為を客観的に判断できるように、具体例をご紹介します。
厚生労働省はパワハラ行為について以下のように示しています。
- 身体的な攻撃(暴行・傷害)
- 精神的な攻撃(脅迫・暴言等)
- 人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)
- 過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害)
- 過小な要求(業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)
- 個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)
参考:厚生労働省・職場におけるハラスメントの防止のために(セクシュアルハラスメント/妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント/パワーハラスメント)「職場におけるパワーハラスメントについて」より(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/seisaku06/index.html)
パワハラか否かは、事例によって継続性や頻度といった条件や背景が関わってくるため簡単には断定できません。
しかし、判断する際のひとつの基準として具体例に触れておくことは大切です。
それぞれ解説します。
1. 身体的な攻撃
怪我の有無などは一切関係なく、以下のような行為はパワハラと判断されます。
- 殴る蹴るなどの暴行
- 物を投げつける
- 物にあたって威嚇する
直接的な暴力はもちろん間接的な暴力も対象となることを覚えておきましょう。
2. 精神的な攻撃
精神的な攻撃とは、以下のような行為を指します。
- 「アホ」「役立たず」といった侮辱の言葉を浴びせる
- あえて同僚や部下の目の前で叱責する
- 必要な指導をせずに放置する
言葉の暴力については「言葉遣いが荒いだけ」と加害者の自覚が全くない場合もあるので注意が必要です。
業務上適正な範囲を超えていれば、パワハラ行為と判断されます。
3. 人間関係からの切り離し
度が過ぎた仲間外れ行為もパワハラ行為と判断されます。
- 意図的に会議から外される
- 集団で無視をする
- 理由もなく1人だけ別室で仕事をさせられる
人間関係には相性があるものですが、仕事が円滑に進まなくなるようなあからさまな嫌がらせの行為はパワハラ行為です。
また、就業中のことでなくても、社員全員に声がかかる歓送迎会に呼ばれないといったことも「人間関係からの切り離し」にあたります。
4. 過大な要求
本人の能力や経験を無視した過大な要求を課すこともパワハラ行為と判断されます。
- どう考えても達成困難なノルマを課される
- 当日締め切りの大量の仕事を投げられる
- 経験のない仕事を指導なしに任される
- 語学ができないのに英語しか使われない会議に出席させられる
上記のように「明らかにできそうにもない業務」を強要されるのはパワハラ行為です。
本人の成長のためだと言われる可能性がありますが、悪意や納得できる説明の有無、長期間続いているかどうかなどで判断できます。
5. 過小な要求
過大な要求とは反対で、本人の能力や経験を無視したレベルの低い仕事しか与えないこともパワハラ行為と判断されます。
- 全く仕事を与えない
- 本来の業務ではなく雑用ばかりさせる
- プロジェクトに参加させてもらえない
単に仕事量が少ないということではなく、スキルや経験不足といった業務上の合理性がなく、継続的に仕事が与えられないときはパワハラに該当する可能性があります。
6. 個の侵害
業務上必要がないにも関わらず過剰にプライバシーに干渉することもパワハラ行為にあたります。
- 歓送迎会の欠席理由を何度も確認される
- 配偶者や交際相手について根掘り葉掘り聞かれる
- 業務時間外に頻繁に連絡をしてくる
上記のようなことは、お互いの信頼関係によってはしつこさを感じないなど「コミュニケーションのひとつ」となり得てしまうので判断が難しいところです。
被害者側が「過度であると感じている」「不愉快に感じている」「ずっと負担だった」という点がポイントになります。
パワハラを放置することによる4つの問題点
パワハラは当事者はもちろん、一緒に働くメンバーや会社にも悪影響を及ぼす行為です。
「どう声を挙げていいか分からない」と放っておけば、大きな問題に発展するリスクを含んでいます。
特に注意が必要な問題点は以下のとおりです。
- 心身の健康を損なう可能性がある
- 仕事の生産性が下がる
- 会社の評判が悪くなる
- 犯罪が成立する可能性がある
自分や周りにどのような影響があるのか知ることで、放置してはいけない行為であることを再認識しましょう。
それぞれ解説します。
1. 心身の健康を損なう可能性がある
長期に渡ってパワハラを受け続ければ、誰でも精神的に疲弊していきます。
そのストレスは、身体にまで不調をきたしてしまう可能性があるのです。
- うつ病
- パニック障害
- 睡眠障害
上記のような症状を抱えるまでに追い込まれ、最悪の場合、出社はおろか日常生活さえも満足に送れなくなります。
社会復帰するのに数か月から年単位となってしまう可能性がある大きな問題です。
2. 仕事の生産性が下がる
パワハラ行為は標的になっている人だけでなく、周りのメンバーにも影響を及ぼします。
下記のような環境や精神状態で仕事をすることになり、生産性は下がってしまいます。
- パワハラ行為を見ているのが辛い
- いつ自分が標的にされるかと思うと怖い
- 職場の雰囲気がピリピリしている
パワハラ加害者にビクビクしている状態では、業務上の正当な指摘や意見交換などもできません。
当然会社の業績アップにも貢献できずに、雰囲気は悪くなる一方です。
3. 会社の評判が悪くなる
パワハラが横行している会社が良い会社といえるわけがありません。
その事実は以下のような形で公表され、会社の評判にも影響します。
- 個人のSNS
- マスコミ
- 厚生労働省の「ブラック企業の社名公表制度」
改正労働施策総合推進法(パワハラ防止法)の改正(2020年6月1日施行)によって、ハラスメント相談窓口の設置が全ての事業主に義務化されました。(参考:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/seisaku06/index.html「2020年(令和2年)6月1日より、職場におけるハラスメント防止対策が強化されました!」PDFファイルより)
社会全体でパワハラをなくしていこうという動きが進む中で会社の名前が公表されれば、会社のイメージは大ダメージを負うことになります。
4. 犯罪が成立する可能性がある
パワハラは単なる個人の嫌がらせやいじめではなく、犯罪が成立する可能性がある行為です。
度を超えた身体的・精神的攻撃は、パワハラの域を超えてしまいます。
- 殴る蹴るの行為は暴行罪(刑法208条)
- 被害者が怪我をした場合やうつ病に疾患した場合は傷害罪(刑法204条)
- 大勢の前で「お前は仕事が出来ないクズだ!」と罵る行為は侮辱罪(刑法231条)
上記のように、さまざまな刑事罰が下される場合があるのです。
当事者ではなくても、パワハラ行為が横行していれば身近な人が犯罪者になる可能性があることを覚えておきましょう。
パワハラで辞めたいときの退職理由の伝え方
多くの方が「退職理由をパワハラと伝えるべきか否か」について悩むことでしょう。
退職に際して自分が望むことは何かを考慮して選択すべきです。
- 損害賠償の請求
- 刑事告訴する
- 労災認定を得る
上記のアクションを考えている場合は、自己都合退職ではなく、パワハラが理由での会社都合退職を選択しましょう。
退職届にパワハラについて記載がないと不利になることがあります。
ただし、会社都合退職をしたくても認められない場合があります。
会社としては「イメージダウンになる」「助成金が支給停止になる」という不都合が生じるためです。
会社側から自己都合退職を強要されたときは、ひとりで悩まずに弁護士に相談しましょう。
専門的な立場から解決に導いてくれます。
パワハラで辞めたいと思ったら、不利益を被らないように準備をしよう
パワハラの被害を受け続けていると、突発的に仕事を辞めてしまいたくもなります。
しかし、感情的に行動しても冷静な判断ができず、被害者でありながら不利益を被りかねません。
パワハラについてよく理解した上で、自分を守るための手段として下記のことを実行してください。
- パワハラの証拠を集める
- 就労可能であれば転職先を見つける
- 信頼できる人や相談窓口に相談する
- 心身の不調があれば病院を受診する
辛い状況でもやるべき準備をすることで、今後の選択肢を広げられます。
後悔することなく、自分の望む形で退職できるよう行動することが大切です。